２１.いつだって人を幸せにするのは、平穏である ページ21
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机の上にコップを置いたオーナーの手には、古い火傷の傷が複数ある。それが何なのかは皆目見当もつかないが、何処と無くそれに触れてはいけないのだと空気で感じ取っていた。
都は遠慮なくコップを手に取り、水を飲み干した。一口喉を通す度に、渇ききった身体を潤してくれる。ある程度冷えた水の美味さよ、緊張と驚愕の連続であった私の身体は驚くほどに渇いていたらしい。
オーナーはそんな様子を見ながら、静かに口を開いた。「少し説教臭くなってしまうかもしれないけど、よく聞いて」と真っ直ぐな瞳で、都を見つめながら。
「………都ちゃん、私はしがない喫茶店の老いぼれ経営者だから君を完全に守ってあげる事は叶わない。
例え君が、この一般社会には少し不利な経歴を持っていたとしても、私にとって君は大事な店員だし、なくてはならない存在なんだ……あの時、路頭に迷っていた君を見つけてから早３年___もう今や孫のように思っているよ。
だからね、都ちゃん。
何よりもまず、自分を優先しなさい。それをする事で、君を非難する人なんて少なくとも此処にはいないんだから。」
『――どう、したんですか……急に、』
歳の所為で細まった瞳の奥には、変わらず暖かみが宿っている。
どこまでも悪意なく、純粋な言葉は、きっと他の人達にとっては当たり前の事なのだろう。都にとっては、慣れなくて、かけられたこともなくて、むず痒くて、恥ずかしさもあれば戸惑いもあって。
何故この人はこんなにも他人を心の底から心配し、大切に思うことが出来るのだろうか。他者に手を差し伸べてあげれる、なんていう人の自己満足じゃあない。当然のことだ、いかにもそんな顔でそんな口ぶりで言葉を紡いでいく。ゆっくりと、丁寧に。
「ただの老いぼれの戯言だよ。
………今日は臨時休業にしたから、安心して休んでね、ゆっくりと体調を休めて。」
最後に皺だらけの目尻を細めて、笑った。いつもの笑みだ。
ゆっくりと立ち上がると、彼は部屋から出て行こうとする。「待ってください」咄嗟に漏れた言葉だった。
無意識に、身体が伝えねばと口を開く。
『あの、――ありがとう、ございました。』
それは、純粋な感謝の気持ち。
不慣れな――普段営業では、客に何度も言う言葉。だけれどそこに本当の気持ちが籠ってたのか？なんて問われれば首を縦には触れない。
感謝なんて、程遠い世界に生きてきたのだから。
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雪原(プロフ) - ふぃおさん» 申し訳ありません。ご指摘ありがとうございます。修正しました！ (2017年12月22日 22時) (
レス) id: b79552e05e (このIDを非表示/違反報告)
ふぃお(プロフ) - 26話辺りから名前変換出来ていませんよ〜 (2017年12月22日 22時) (レス) id: 86fe828a4e (このIDを非表示/違反報告)
リオ - 設定から書き方までツボ過ぎてやばいっすわｗ続きがくっそきになるので更新頑張ってください!! (2017年9月18日 20時) (レス) id: 0dc7e3ba93 (このIDを非表示/違反報告)
雪原(プロフ) - すりぴいさん» コメントありがとうございます。稚拙な文章ですが、そう言って頂けて大変嬉しいです！不定期になるかとは思いますが、精一杯頑張ります…！ (2017年9月18日 20時) (レス) id: 4141bf49c5 (このIDを非表示/違反報告)
すりぴい - ﾝﾝﾝﾝｯ！！好きです。更新頑張って下さい! (2017年9月18日 19時) (レス) id: 796ae87385 (このIDを非表示/違反報告)
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