＊21 ページ21
「ふぅ…終わったぁ〜…」
1時間後、テーブルの上に最後の料理を並べ終えた私は大きく息をついた。
時計を見ると、ユンギ先生からこれから帰るというメッセージが届いてから15分が経っている。
洗い物を始めようかと蛇口を捻ったところで、ちょうど玄関のほうから扉の開く音がした。
慌てて水を止めて、濡れた手を拭う。
「ユンギ先生！」
早足で玄関へ向かうと、薄暗い中に先生の姿を見つけた。
そのまま駆け寄って行って、こちらを向いた先生の胸元に思いきり飛び込む。
YG「おっと…。ただいま、どうした？」
「おかえりなさい。…会いたかった」
顔を埋めたまま言うと、先生はあぁと声を漏らしたあと、腕に力を込めて私を抱き締め返してくれた。
YG「ごめん、A。寂しい思いさせたよな」
とろけるように甘くて優しい声が耳に落ちて、胸が高鳴る。
本当は大丈夫だよって言って、労うような言葉をかけてあげたかったけれど、今はなんだか甘えたい気分。
「ん。ちょっとだけ」
YG「昨夜も言ったけど、明日休みだから。お前のやりたいこと全部やろう。…それで許してくれるか？」
「うん！」
頷いて見せると、先生は並びのいい歯を見せて笑った。
「先生、お腹空いてる？ちょうど夕食の準備してたところなんだけど」
YG「あぁ、すげぇ空いてる」
「よかった、じゃあ冷めないうちに食べよう。今日は頑張ったんだよ？」
早く早く、と、先生の手を引いてキッチンへ向かう。
「見て！いつもよりちょっと豪華でしょ？」
YG「…」
けれど、テーブルの前に案内したところで黙り込んでしまった先生。
不思議に思ってその表情を伺うと、さっきまでとは打って変わって難しい顔をして、私のことをじっと見つめていた。
「先生？…どうしたの？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 596人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yuzu | 作成日時：2022年6月5日 21時
