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「み、…みなさん。お、おは、っ、…おは、ようござい、ます……」
「「おはようございまーす」」
次の日の朝のホームルーム。
教壇に立つときの躑躅森先生は、相変わらず重度のあがり症。
「……」
――『約束してくれるか?』。
そう言って、見たことのない表情をした躑躅森先生の姿は、今はそこには見当たらない。
というか、昨日が何気に初めてだった。先生とあんな風にしっかり話したんは。
おどおどきょどきょどしながらも何とか朝の口上を終えた先生は、「ふー…」と息をついて。
1時間目の授業が始まるまでの短い休み時間で、クラスの女子やら男子やら、みんなが一斉に躑躅森先生に話しかけに行く。
「盧笙せーんせっ! 」
きゃっきゃと黄色い声が上がる中、私はぼんやりとその様子を見つめていた。
「……」
私は出会い系やって、未成年飲酒なんかに手染めようとした、薄汚れの高校生。
カッコイイ先生にきゃいきゃい言いながら近づいていくなんてこと、もうできへん。
私がもうちょい、無邪気で可愛げある子だったらな。
……まあ今は別に、そうなることも別に求めとらんけど。
「A」
何となく憂鬱気分で頬杖ついてた私の前に、突然重なる影。
「? なんや、嶋田くん。おはようさん」
「なんや、やねーって。おはよ」
私に話しかけてきたのは、嶋田大晟くん。
クラスの学級委員を務めてる優等生。
容姿端麗文武両道の、いわゆるエリートくん。
優等生だけど全然周りに驕ったような態度取らない気さくな性格やから、それはもう躑躅森先生の次くらいにはようモテる男の子。
そんな彼は、こうして何かと私に話しかけてきてくれることが多い。
仲良くなったきっかけは忘れてしまった。
けど、恐れ多いことに、私はどこか彼に好印象を持たれてる(気のせいじゃなければ)。
「なあ自分、また目に隈作って。あんま夜更かししてっとあっちゅーまに肌悪なるで?」
「嶋田くんみたいに規則正しい生活送っとる優良高校生とはちゃうねん、私」
「なんやと」
苦笑いを浮かべた嶋田くんが、空いてた私の隣の席に座る。
「せや、A。急やけど今週末空いとる?」
あ。これ。
いつものパターンや。
「んー…週末は空いてないって、いつも言うとるよね?」
「俺、毎週お前にフラレまくった暁に鋼のメンタルものにしたで」
「…あはは」
「あはは、やのうて。そろそろ俺と遊んでくれはったってええやろ、友達なんやから」
彼は、こうやって。毎週私に遊ぼうと誘ってくる。
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かぁ! - 42は僕も欲しいですね、、、 (2020年10月28日 21時) (レス) id: 6b47d62694 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - りぃ最高、、、42話を所望いたします(スライディング土下座)さん» コメントありがとうございます。倫理的にまずい話かと思い、しばらく更新をストップしていたのですが…そんなお言葉を頂いてしまった以上、よく考えなければなりませんね(^^; そう言っていただけて嬉しいです。前向きに検討させていただきます。 (2020年10月22日 13時) (レス) id: 48104f3cfe (このIDを非表示/違反報告)
りぃ最高、、、42話を所望いたします(スライディング土下座) - 42、、、欲しいです (2020年10月18日 8時) (レス) id: 6b47d62694 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» ハネムちゃん本当にいつもありがとうございます。楽しんでいただけたら嬉しいです\( ´ `)/ (2020年7月1日 23時) (レス) id: 48104f3cfe (このIDを非表示/違反報告)
ハネム(プロフ) - えもい。えもさの極み。美月ちゃんの小説はどれも物語が読者の心の内にすっと忍び込んでくるようなしなやかさがある。今回の盧笙くんの小説もまさにそんな感じです。更新楽しみにしてます。 (2020年7月1日 14時) (レス) id: bb0dd7d6d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美月 | 作成日時:2020年6月27日 7時