10《私たちを繋いだもの》 ページ10
途切れ途切れの声は、彼自身、言葉を選んでいるように見えた。
まったく話さない無口な人だと思っていたけれど、こんな風に優しい言葉をかけてくれることがあるのか。
私が『顔が綺麗』と発言したことに関してノータッチなのはなんというか、さすがだと言わざるを得ないけれど。
ぽかんと見つめてしまう私に山田くんは何も言わず、ひたすら画面の向こうのラッパーさんに注目している。
中学生離れした端正な横顔は、ちょっとだけ緊張しているように思えて。
さっきから全然こっちを見てくれないし、愛想もあまり良くない。
でも、私の突然の趣味の押しかけにも、ポンコツな態度にも、決して不快そうな態度を見せたりはしない。
噂に聞いていた慇懃無礼さも、初めて私たちが会話をした(挨拶をした)ときの冷徹な態度も、今この瞬間の彼には見えない。
…ひょっとして。
山田くんは、自分で選んで一人でいるんじゃなくて、自ら率先して話しかけにいくのが苦手なだけだったのかな。
話しかけに来てくれた子がいたとしても、どうしたらいいか分からなくて、つい冷たく当たっちゃっただけだったのかな。
そんな、勝手な考えばかりが頭を巡る。
「…山田くん」
「なに」
このラッパーさんのことを好きになって、良かったかも。
こうやって、彼と話せるきっかけができたから。
「ありがとう。そう言ってくれて、嬉しいよ」
なんだ。
山田くん、話してみれば普通に優しいじゃない。
思いがけない感謝の言葉だったらしく、彼は少しの間私を呆然と見つめて。
そして、海が凪ぐように優しく笑って、目を細めた。
「こちらこそ」
ああ。本当にやばいかもな。
今度は私が顔を逸らす番だった。
それから会話もなく再び動画に視線を戻す私たち。
画面の向こうで、奇抜な格好のラッパーが陽気に韻を踏み続けている。
私と山田くんは授業開始のチャイムが鳴るまで、そのラップをずっと一緒に見続けていた。
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
