8《予感》 ページ8
「君…ラップ好きなの？」
「へっ？」
ある日の休み時間。お気に入りの曲のラップ詞をノートに書き連ねていたら、突然隣から話しかけられて。
驚きに恐る恐る目を向ければ、形の良いオッドアイが探るようにこちらを見つめていた。
え、何？
今まで頑なに口を開いてくれなかった彼がなぜいきなり私なんかに？
一瞬「本当に私に話しかけてるんだよね…」とチラチラ辺りを見渡すが、「君しかいないだろ」とでも言いたげな目を向けられたので、慌てて言葉を返す。
「ど、どうしてラップだって」
「最初は普通の英文書いてるのかと思ったんだけど、随分と韻踏んでたから」
そう言って彼は私の手元のノートを「それ」と指さす。
つまり、私がこのリリックを書いている間、彼はずっと私を見ていたということになるのか。
すぐ隣の視線に気づかないなんて、よっぽど集中してしまっていたのかな。どうして気がつかなかったんだろう。
話の内容よりもそんなことばかりに気を取られ、あわあわと口を動かす。
「へ、へえ。英文見ただけでよく分かったね、さすが山田くん」
「…別に」
「う、…うん。ラップはその、最近興味を持ち出した程度なんだけどね」
「…」
「私、ポップ洋楽が大好きで、ついこの前お気に入りのアーティストの曲にフィーチャリングしたラップがすごくかっこよくてさ。そのラッパーさんの動画ばかり見てたら、すっかりハマっちゃったんだよね」
やけに早口になってしまったまま「ほら」とスマートフォンのアプリを開いてラッパーさんの動画を彼に向けると、彼は意外にも興味を示してくれて。
「……ほんとだ、良いね。この人のリリック」
山田くんがこちらにぐっと身を乗り出してきたことで、ふわりと清潔な香りが私の鼻腔をくすぐる。
「っ…」
うわあ、いい匂い。
ちょっと綺麗な男の子に近寄られたくらいで、すぐドキドキする。
心臓を高鳴らせながら見る隣の彼は美しく、儚い雰囲気があって。
至近距離にある美少年の横顔に、身体中がカッと熱くなっしまう。
これ、ダメなやつかもしれない。
私は胸に芽生えたひとつの予感に蓋をしながら、動揺でスマートフォンがブレないよう、必死に持ちこたえていた。
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
