44《友達？》 ページ45
息を切らして走る。ただただ走る。
喉の奥が焼けるように熱くて、油断をすれば雫がこぼれ落ちてしまいそうで。
片手で目元を抑えながら、走る、走る、走る、走る。
『僕らはずっと前から恋人同士だよ』
耳にこびり付いた甘い声。
嫌だ。嫌だ。振り返りたくない。
どうか、このままひとりになれますように。
何もかも忘れて、このどうしようもない想いがどこかへ飛んでいってくれたら。
「おい、待てよ！」
でも、君は容赦なく私を壊しにかかるんだね。
後ろから勢いよく引かれる腕と、知っている香り。
顔を合わせたくなくて振りほどこうと身を捩っても、抵抗虚しく無理やり肩を掴まれ、向き合わされて。
夏のはじまり。冷房の効かない校舎内は、その空間にいる誰もが汗を流す。
揉み合った身体は互いに濡れていて、その感触に、私たちは一瞬戸惑ってしまうのだ。
かちり。
熱を帯びた視線のぶつかり合う私たちの横で、視聴覚準備室のスピーカーからホームルーム開始のチャイムが鳴り響いた。
「はぁっ……くそっ、こんの体力、馬鹿が……はぁっ……はぁっ……」
「…っ、」
息を荒らげてこちらを睨みつける三郎くんは、いつもの彼だった。
さっきの画像や、教室で甘やかな声を放った時みたいな、あんな優しい顔はしていない。
私はズビッと鼻を啜り、息を整える。
走ったばかりなのと、泣きそうなのとで、収まるには数分かかったけど。
私が話し始めるまで、三郎くんは何も語らなかった。
説明、しないの？
君から私に言うことは、何もないの？
「っ、三郎くん。私のこと、そんなに信用できない？」
「…」
「話してくれたって良かったじゃん。付き合ってる女の子がいることくらい」
「…」
口を閉ざしたままの彼は、私の言葉を否定も肯定もしない。
ただ…今までに見たことないくらい哀しそうな目を私に向けていた。
「どうして…？ どうしてなの、三郎くん……」
気がつけば、私は彼のシャツに手を伸ばし、縋りついていて。
何が…どうしてだ。
三郎くんが綺麗な女の子と付き合っていた、ただそれだけのこと。
私がそれを咎められる立場じゃないのは、わかっている。
…わかっているけど。
言葉も交わさぬまま、見つめ合う。
私たちって…私たちって…
「私たちって…ともだち？」
答えを受ける代わりに近付く身体、伏せられた睫毛。
震えた私の唇が、優しく塞がれる。
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
