38一郎side《依頼内容》 ページ39
訝しげな目を向ける俺を他所に、少女はテキパキと作業を続けて。
20個。20個もの札束をテーブルに並べ終えた目の前の少女はすっと俺の瞳を見据えた。
その瞳に、光は宿っていなかった。
美しい顔も相まってそれはさながら、人形のそれと同じようで。
「お宅の山田三郎くんを、私にください」
そう言って頭を下げた少女のつむじを、約数秒間、俺はただ見つめることしかできなかった。
＊＊＊
「…あー、おい、」
「具体的な依頼内容はこうです。三郎くんに、私が彼の恋人であると周りに公言してもらうこと。そして、三郎くんが私のことを言葉で、身体で愛すること、」
「なあ。思ったことを言ってもいいか」
語気を強めた俺の言葉に、少女はゆっくりと頭を上げる。
「おめぇさっきから何言ってんだよ」
相手がお客様だということも忘れ、目の前の少女に自分の思いをぶつける。
「そこそこの大金目の前に並べられて、この俺が揺らぐとでも？ 三郎は俺の大事な弟だ。惚れた男を金で買おうとするようなダセェ女に引き渡すわけにはいかねぇ」
「…」
「つーかその思いをぶつけるべき人間は俺じゃねぇだろ。その様子だとあいつにもまだこの件については話していないと予想するが、実際のところどうなんだよ？ あ？」
「…」
「……答えらんねーなら話は終わりだ。とっとと帰ってくれ」
当本人である三郎の許可もとらねーで、ふざけたこと抜かしてやがる。
あいつにゃあな、お前なんかよりずっと可愛げのある優しい女がそばに控えてんだよ。
昨日俺に笑顔を向けてくれたそいつの顔を思い浮かべながら目の前の少女に「おら、出口はあっちだ」と指さしてやると。
俺の返答など予想通り、とでも言いたげに挑戦的な目を向けられる。
…なんだ。まだ何か言う気か。
「なるほど。もしこの依頼を引き受けてくださらないのなら私にも考えがありますよ」
「…んだと？」
中学生のくせに、脅しまで覚えてんのか。一瞬、ヨコハマディビジョンの汚職警官の顔が思い浮かぶ。
こいつは、歳こそは若いものの相当悪い女に違いない。
俺は覚悟を決めて次の言葉を待った。
「私の母親は、佐藤真織。貴方もご存知でしょう？ 言の葉党の議員なんです」
「……っ、は？」
「ふふ。もし依頼を通してくれないのであれば。母親の指示ひとつで、萬屋ヤマダはすぐに潰れますよ」
少女から紡がれた衝撃の名前と内容に、俺は思考を混乱させた。
39一郎side《依頼という名の脅迫》→←37一郎side《垣間見える狂気》
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
