37一郎side《垣間見える狂気》 ページ38
メモをし終えた俺は、再び「もしもし」と尋ねる。
「お答えくださりありがとうございます。ではサトウマユさん、明日の午後六時頃、こちらまでお越しいただくということで――」
『山田一郎さん。最後にひとつだけお願いがあります』
「…？ はい、なんでしょう」
『この依頼に関する話は、明日私と貴方が面会するまで、三郎くんには一切伝えないでください。それでは』
その言葉を最後に、ガチャリと電話が切られた。
「……なんなんだよ一体」
変な依頼人だな。
面会相手をわざわざ名指しで俺と指定してきたり、依頼人のくせしてやけに自分のペースに持っていかせようとしたり。
それに何より、最後の一言がどうも引っかかる。
三郎にまつわる依頼だってのに、ここまで当の本人に知られたくない様子を見せるのは、一体どういうわけあってのことなのだろう。
切れた受話器を持ったまま、仲良く勉強会してる三郎たちの方を見やる。
……何か、面倒なことにならなきゃいいんだが。
なんとなく煮え切らない気分のまま、俺はそっと受話器を置いた。
＊＊＊
依頼人の正体は、三郎と同じ中学校に通う同級生だったらしい。
昨日うちに来てくれたまるで邪気のないAを見たばかりのせいなのか、この少女は奴と随分雰囲気が違うことを実感させられる。
話しぶりは異様に落ち着いているし、一番に目を引くのはその容姿。
しつこくない程度にブランド物で全身を包んだ姿は、お嬢様育ちというにふさわしく。
顔立ちも整っていて、一瞬芸能人か何かと疑ってしまうほどだった。
大人っぽくて、年相応じゃないというか…もしかしたら、三郎も周りの人間から見てこういう風に映るのかもしれない。
お嬢様の習わしが染み付いた丁寧な挨拶に、俺も静かに対応した。
「…三郎の同級生、だったんだな。よろしく。それで、君は一体なんの用で――」
俺が言い終える前に、彼女は両手で抱えていたやけにデカいバッグのファスナーを開け、中から札束を1つ、2つ、3つ、取り出していく。
……おいおい、どういうつもりだ。
内容を説明する前に大金を見せつけてくる依頼人は今までに何度も見たことがあるが、そうしてきた人間たちにろくなのはいねぇ。
そういう奴らは決まって、俺たちに無理難題を突きつけてくるのだ。
とてつもなく、嫌な予感がする。
38一郎side《依頼内容》→←36一郎side《電話の相手》
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
