30《距離感馬鹿男たち》 ページ31
部活帰りの男の人独特の香りがふわっと近づいて、不覚にも胸が高鳴る。
ああ、なんか。山田くんと初めてしっかり会話した時のことを思い出した。
綺麗な男の人がそばに来られて、緊張しちゃうあの感覚。
ポンコツな私は固まったまま、笑顔で手を差し伸べてきたその人の顔をおろおろと見つめ返すことしかできない。
「おい二郎！ お前部活終わったばかりの汚い手でこいつに触ろうとしてんじゃねぇ」
突如、背後から伸びてきた手が私の肩と首辺りに巻きついて、青年と私を遠ざけるかのごとく後ろに引っ張られる。
驚きのあまり思わず「ひいいぃっ」とその腕にしがみつくと、反動で山田くんの上半身に完全に背中を預けてしまった。
「あぁっ！？ って、……あー。確かにそうだな。畜生、今回は三郎の言う通りだぜ。手ぇ洗ってくる」
しぶしぶ、といった様子で立ち上がり洗面所に向かおうとした彼を、山田くんが容赦なく挑発する。
「はっ、今日はいつにも増して従順なんだな。まさか二郎ちゃん、慣れない女の子を前に猫被ってるんでちゅかぁ？」
「アァ！？ んだとてめぇっ！ その減らず口いい加減どうにかなんねぇのか！」
「あーやだやだ、そんなに叫んで汚い唾を飛ばさないでくれまちゅかぁ？」
「そのウザイ話し方もやめろ！」
山田くんが、私と頬が触れそうな距離で、二郎さん(多分、山田くんのもう一人のお兄さんだ！)と喧嘩し合ってる。
なんなんだこのカオスな状況は。
ってか、近い近い近い近いっ！！
いくら私が独自に距離感馬鹿男の認定を授与してる彼だとはいえ、これはさすがに近すぎる！
記録更新しすぎてる！！
「や、山田くん、ちょっと、ねえ、」
洗面所方面から聞こえる二郎さんの言葉に延々と言い返してるだけの山田くんに、私の声は届かない。
手を洗い終えた二郎さんが戻ってきてからも、山田くんは私を解放してくれなかった。
はぁ…もう無理…心臓…止まる…
山田くんの香りを肺いっぱいに吸い込みすぎて、私の脳はキャパオーバー。
「ん…おい、三郎。そいつ死にそうになってっけど」
「えっ…あ、ほんとだ」
急に静かになった二人は、「おーい生きてるかぁ？」「ちょっとお前、しっかりしろよ」と、超至近距離で私の顔を覗き込むなり肩を揺さぶってきて。
もう知らね。
どうでもいいからあなた方、一回私から離れてくれ。
私的距離感馬鹿男認定者リストに、山田二郎さんの名前が追加された。
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
