29《山田くんのもうひとりのお兄さん》 ページ30
【Aside】
＊＊＊
「うそ……私たち、今回のテスト範囲網羅しちゃったの？」
「ああ、みたいだね」
確認のためにテスト範囲表と教科書に目を通し、そして冊子をパタンと閉じた山田くんがふっと鼻で笑って。
「で？ 他に分からないところは？」
そう自信たっぷりに問いかけられた私はただ、
「もうない…です」
と、答えることしかできなかった。
あんなに難しかった数学の問題たちが嘘のように解ける、解ける。
山田くんの説明に目からウロコを落とし続けて約三時間。
もう今回のテスト範囲で分からないところはなくなってしまっていた。
「すごい…すごいよ山田くん！ 本当にありがとう！」
山田くん、やっぱちゃんと優等生なんだな。感謝しかない…。
「いーえ。お前も僕の想像以上に物分りがよくて驚いた。一度わかっちまえばすんなり、って感じだったから」
失礼なことを言うようだけど、山田くんに褒められる日が来るなんて…目に熱いものが滲む。
ひとり感動する私だったが、ふと彼に気になることを伝えた。
「私、門限までまだ全然時間あるよ」
「ああ、門限。それって何時なの？」
「21時」
「へー…って、はぁ！？ 思ったよりも全然あるな」
時計の針が刺す時刻はまだ…衝撃の16時。
門限までまだあと5時間もある。
山田くんの指導能力の高さのおかげで、想像以上に早く、今日の目的を達成してしまった。
「21時って、かなり遅くないか。お前ん家って結構放任主義なの？」
「うーん、他の家庭と比べるとそうかもね。それに今日は勉強しに行くって伝えてあるし、いつもより遅く帰ってきてもいいみたいなこと言われた」
「ふーん」
自分から聞いたくせに、山田くんは興味なさげにどこか遠くを見ている。
「……何、しよっか」
「…だな」
思案する私たちの耳に、「ただいまー」と、玄関口の方から声が飛び込んできて。
「げっ…」
「？」
あからさまに顔を歪めた山田くんの視線の先。
私もそちらを見やると、全身汗びっしょりのままリビングに上がってきた美青年が、私の存在に気づくなり、
「ん？ …あ、ああっ！お前！」
と、こちらを指さしてきた。
「へっ…わた、私？」
「そうそうお前だよ！ いや〜そういえば今日ウチに来るって言ってたよな。よろしく！三郎の友達！」
身長の高いその人は瞬く間に、私の隣の、山田くんとは反対側の空いたスペースに腰掛けて、そのまま握手を求めてきた。
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
