27一郎side《恋愛初心者》 ページ28
人間に生まれた以上誰もが通る道。俺だってそれなりに経験はある。
だがそれを、自分の弟も…と思うと、感慨深い。
こいつも、大きくなったんだなぁ。
「彼女と話すの、すごく楽しいんですよ。今まで誰とも通じなかった話題とか、彼女は色々知ってくれているので話が尽きなくて。あ、そうそう！ しかも彼女はラップにもハマっているみたいで、」
新しくできた友達のことを饒舌に語る三郎の目は、今まで見たこともないくらいに輝きを放っていた。
その子に関する話はなかなか止まらず、やがて風呂上がりの二郎が俺たちの話にこっそり聞き耳を立てていたのは、ここだけの話な。
＊＊＊
あれから三郎は毎晩毎晩、食事の時間にその友達の話をしてくれた。
それがあまりに楽しそうに語るもんだから、いつも文句ばかり言う二郎もその話題について粗探しすることは控えていたみたいで。
よくまあこんなにも彼女とのエピソードが尽きないんだなと思い、俺はある日彼にこう問いかけたのだ。
「三郎。お前は、その友達のこと好きか？」
「？ ええ、勿論、好きですよ」
あっさりと返された、『好き』の二文字。
横で、二郎が味噌汁を吹き出しかけている。
あーいやぁ…これには俺も正直びっくりだわ。
「？ 一兄も、二郎も…どうしたんですか」
「ん？ いや、別に、その…ははっ！ 良かったなぁ、好きな女の子がいて」
「はい、大好きです！」
惜しげもなく茶の間に放たれた『大好き』の三文字。
二郎は今度こそ、口に含んでいた味噌汁を吹き出した。
「わっ！ なんだよ二郎、汚いな」
「うっ、うるせぇ！ お前が変なこと言うから驚いたんだろーが！」
「はあっ？ 今の僕の発言のどこがおかしいってんだよ！」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた弟たちの前で、俺は頭を抱えてしまう。
あちゃー、これは恐らく。
自覚なしのようだ。
もし恋心を自覚していたとしたら、あの照れ屋な三郎が、よもや二郎の前で「好き」やら「大好き」やら発言できるはずがない。
三郎は恐らく、恋愛というものに疎いらしい。
惚れられた女の子のほうは…前途多難だな。
心の中で苦笑しながら、俺はまたいつものように始まった兄弟喧嘩を拳で止めた。
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
