24一郎side《友達の話》 ページ25
【一郎side】
4月末、あたりだっただろうか。
それまで普段学校の様子を話すことのなかった三郎が、夜の食卓で、
「一兄。僕…友達ができたんです」
そう、嬉しそうに報告してきてくれたのは。
＊＊＊
三郎が学校での出来事を俺たちになかなか話さないのは決して、他の生徒にいじめられているから、とか、俺たちに話したくない、とか、そういった理由ではなかったはずだ。
こいつには恐らく、友達と呼べる人間がほとんどいなかった。友達とのエピソードが、圧倒的に少なかったのだ。
テストで全教科百点をとりました、成績が学年一位でした。
勉強面に関する報告はそうやって定期的になされるものの、生活面や人間関係のことに、あいつは一切口を開かない。
時々二郎が、兄貴なりに心配して、三郎に
「お前、ダチとは上手くやってんのかよ」
などと尋ねると、彼は決まって、
「はあ！？ 低脳に答える義理なんかねーよっ！」
と、ぎゃんぎゃん喚き散らかしていて。
代わりに俺が「三郎、学校の友達とは上手くやってるか？」と聞いても、あいつは気まずそうに口を閉ざすばかりだった。
正直、俺は心配していた。
二郎も三郎も逞しく、良い男に育ってくれている。
二人のラップのスキルが日に日に磨かれていってるのはこの俺が誰よりも肌で感じていることだし、
あいつらが人間として、男として、やるべきことを自分なりにしっかり考え、行動してくれているのもちゃんと分かっていた。
だが三郎は、生きる上で絶対的に大切な、友達の存在のデカさってやつにいまいちピンと来ていない節がある。
大事な弟二人を比べるようなことはあまりしたくないが、三郎はどうも、二郎のような人懐っこさとかいったものには欠けるらしかった。
ただ情けないことに、三郎に友達が少ないのは仕方のないことなのかもしれない、と諦めかけている自分がいたのも事実で。
三郎は聡い男だ。何もかも一人でそつなくこなしてしまうために、よっぽどのことがない限り他人の助けを借りたり、頭を下げることもしない。
すべて計算で動いてしまうあいつには、周りの奴らもどこか線を引きがちになってしまうのだろう。
それでも、一兄、一兄と俺のことを誰よりもリスペクトしてくれる可愛い弟には、友達の大切さに気づくことで、もっと広い世界を知って欲しかった。
仲間を増やし、語り合い、人生を面白いものにしてくれれば、と。俺はそう願っていたのだ。
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
