23《鳴り響く電話》 ページ23
「馬鹿っていうことないでしょーっ」と、またちょっとしたことで騒ぎ始める私たちだったが。
リビングにけたたましく鳴り響いた固定電話の音で、私はひいっと背筋を震わしてしまう。
「ただの電話だろ。何ビビってやんの」
そう言って立ち上がり、子機電話に向かおうとする山田くんを、一郎さんが呼び止めた。
「三郎。俺が出るから、お前は早くAの勉強見てやってくれよ」
「えっ、でも一兄」
「ほーら。『いつも何だかんだ言いながら結構頑張ってるあいつに、少しは協力してやりたい』、んだろ？ だからその通りにしてやれって」
「…！？」
「え」
突然爆弾発言を投下するなり、顔を真っ赤に染め上げた山田くんをほっぽったまま。
一郎さんはしてやったり顔で「はい、萬屋ヤマダです〜」と受話器をとった。
山田くんが言っていたという一郎さんの言葉を、頭の中で反芻する。
『いつも何だかんだ言いながら結構頑張ってるあいつに、少しは協力してやりたい』
『あいつ』って、私のことだよね。
上機嫌な一郎さんと林檎みたいに赤くなった山田くんの顔を交互に見ていたら、なんだか…にやけてきて…えへっ……
「山田くん、私に『協力したい』って言ってくれてたんだ…自分のお兄さんに……へぇ……」
「〜〜〜〜っ、おい、そのニヤニヤ顔をやめろぉっ！」
「……え？ あぁ、そいつなら今ここにいるんで代わりましょうか。……？ 必要ない？ ……なるほど、分かりました。少々お待ちください」
それから私たちは小言を言い合ながらも、勉強会を始めたのだが。
山田くんの説明を聞きつつ、視界の隅で、一郎さんが子機電話片手にこちらを見つめているのが分かった。
やがて、その形の良い顔が難しそうに歪められる。
その瞳が、山田くんに向けられている。
「…？」
「ほら、ぼーっとすんな」
山田くんは私に教えることに集中していたようで、一郎さんの異変には気が付かなかったらしい。
…気の所為、だよね。
そう思うことにして、私は山田くんの説明に再び耳を傾けた。
この1本の電話が、私たちの運命を掻き乱していくはじまりだったのだ。
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
