21《山田くんのお兄さん》 ページ21
山田くんに案内されるまま奥に進むと、キッチンに立つ大きな男の人の後ろ姿を見て、思わず「あっ」と声を出してしまった。
この人って、もしかして。
期待を込めて背中を見つめていると、私の小さな叫び声に反応したその人が振り返った。
「おう！ 君が三郎の言ってた友達か」
エプロンに身を包んだその人はじゃがいもの皮をむいているところらしく不安定な体制だったが、私の顔を見るなりニカッと弾けるような笑顔を見せてくれた。
「お、お邪魔してます！ 山田一郎さん、ですよね」
「おう、そうだぜ」
私は興奮気味に頭を下げて、その大きな体をつま先から頭までじっと見つめる。
元TDDのメンバー。本物の、山田一郎さんだぁ…。
そんな有名人が山田くんのお兄さんだって聞いた時は本当にびっくりしたけど、こうして見ると、どことなく顔が似ている気がする。
そして、写真とかで見るより実物の方がずっとかっこいい。
当然山田くんもびっくりするほどのイケメンなのだけれど、一郎さんも全然引けを取らないっていうか…流石血の繋がった兄弟。
爽やかオーラ全開の一郎さんに感動していたら、彼はじゃがいもと包丁をまな板に置いてわざわざこちらまで近寄ってきてくれて。
うわあ、そばまで来ると身長の高さが際立つなぁ。
クラスでも学年でも一番背の高い山田くんより、一郎さんはずっと大きかった。
「君は、えーっと…」
「あ、AAです！」
「おお、そうか。いつも三郎と仲良くしてくれてありがとうな。話には聞くんだが三郎のやつ、全然君の名前教えてくれないからよ」
一郎さんの言葉を聞いた山田くんは、「い、一兄！ そ、そんなこと、ないですって、」と、明らかに動揺を隠せていない。
「あははっ。山田くんって全然私のこと名前で呼んでくれないんです。名前でも苗字でも、ですよ？ だからいっつも『お前』って言われてて。多分、彼も言い慣れてないんだと思います」
「う、うるさいな！一兄の前で余計なこと言わないでくれ」
必死に私の口をおさえようとする山田くんの手をひょいひょいすり抜ける私に、山田くんが「おまえぇ」と握りこぶし二つで私の頭をぐりぐり挟み込んできた。
私は「いててぇぇぇっ」と、大して痛くもないのにそう叫んで。
じゃれ合う私と山田くんを、一郎さんが穏やかな瞳で見つめていた。
「嬉しいな。三郎にこんな素敵な友達ができて」
そう呟いた声は、私たちの耳には届かなかったけれど。
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
