19《様子のおかしい山田くん》 ページ19
そして、約束の日はあっという間に訪れる。
待ち合わせ場所、ほぼ同時に二人がたどり着き、そして互いに一瞬言葉を失った。
私服姿の山田くん、すっごくかっこいい。
制服姿であんなにかっこいいのに、私服になるとさらに輝きが増している…
そんな感想を抱いては、頭の中の邪念を振り払った。
やめよう。
今朝寝て覚めてスッキリした頭で考えた。私は今日、彼に苦手な数学を教えてもらいに行くだけなのだ。
決して、遊びに行くわけではない。
山田くんとの楽しい時間を妄想してしまっていた自分に喝を入れるため、私は彼に向かって勢いよく頭を下げる。
「？…お、おい、」
「山田くん！ 今日はよろしくお願いいたしますっ」
ふんっと鼻息を荒くして見上げれば、困ったように私を見つめるふたつの瞳。
「…あ、ああ。今日は存分に叩き込んでやるから、覚悟しとけ」
「うん！」
「じゃ、行くぞ」と歩き出した山田くんの背中に、「待って〜」と言いながらついていく。
車が私たちの近くを通ると、山田くんはさりげなく車道側に立ってくれた。
「やさし」とからかうように顔を覗き込めば、
「い、一兄が言ってたからね。男が車道側を立って歩くのは当然のことだって」
と、なぜかめちゃくちゃ早口でまくし立てられる。
山田くん、なんだか様子がおかしい。
その様は、いつしか山田くんが田中さんと話してた日の放課後の彼の態度を連想させた。
…なんとなく、思い出したくなかったんだけどな。
いやいや。さっき喝を入れた自分はどこに行った。
余計なことは考えないようにして、お勉強頑張ってやろう。
そう心に決めながら、紳士で、ちょっぴり本調子じゃない美少年の隣を歩いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
