18《まさかのお誘い》 ページ18
夏休み前のテストまであと２週間、という時期に迫ってきていた。
勉強してないわけじゃなかったけれど、やっぱり苦手な教科に手を負うのは学生の宿命で。
数学の教科書を眺めては「はあ…」とため息をつくのを今日一日でもう何度も繰り返している。
意味の分からない数式を悶々と見つめていたら、机の上に置いていたスマートフォンがブブッと震えて。
通知画面を見ると、
山田くん：
【数学、分かんないなら教えてあげる。今度の日曜日、僕の家に来なよ。兄弟たちがいるだろうけど】
絵文字ひとつもないシンプルなメッセージがそこにあって。
どうやらあの神童山田三郎くんが、直々に私に救いの手を差し伸べてくれるらしい。それは非常にありがたいことだ。だが待て。
「"今度の日曜日"……"僕の家"……？」
僕の家？ ぼくのいえ？ …ボクノイエ？
…山田くんの家？
ようやく意味を理解して(理解したのに！)脳内大混乱のまま山田くんの席のほうを見ると、彼の姿は見当たらない。
え？ え？ 山田くんどこ？ 休み時間はだいたい自分の席にいるのに！
きょろきょろ辺りを見渡していると、背後からふっと耳に息を吹きかけられて。
「ひゃっ…」
震えてみっともない声を出した私の耳元で、
「ばーか。ここだよ」
と、意地悪な囁きが聞こえた。
「ちょっ」
振り返るともう山田くんは私に背を向け、教室の外に歩いて行ってしまっていて。
周りのみんなは私たちの様子に気づかなかったらしく、何事も無かったかのように各々がそれぞれの時間を過ごしている。
「あ、あいつぅ…」
なんなのよ…ほんと…
最近の山田くん、心臓に悪すぎる…。
チャットアプリに届いていた彼からのメッセージに、「ありがとう。お家、お邪魔して平気なの？」と返すと、「大丈夫だから」とすぐにメッセージが返ってきた。
「まじか…」
…土曜の夜、お母さんのフェイスパックくすねちゃおうかな。少しでも肌のコンディションよくしていきたい。
日曜日、何着ていこうかなぁ。
勉強を教えてもらいに行くなんて約束は半分忘れ、山田くんからのまさかのお誘いに私はただ浮かれ切っていた。
19《様子のおかしい山田くん》→←17《君が笑ってくれるだけで》
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
