13《戯れ》 ページ13
待ちに待った放課後のひとときが今日もやって来る。
教室の隅っこの席を前後に座る私たちは、相変わらず他愛もないおしゃべりに花を咲かせていた。
「ねえねえ山田くん。この前新曲出たんだよ、メアリー・カーラーの」
「またメアリー・カーラー。お前ほんとそいつ好きだよな」
「うん！ 大好き！」
私がお気に入りの海外アーティストについてあれこれ語り始めると「まーた始まったよ」と怠そうに首を鳴らし始めるくせに、結局いつも最後まで話を聞いてくれる。
お互い相槌を打って、自分の考えを述べ合って。
世間話も、ふざけた話も、真面目な話も、彼とするお話は何もかもが楽しい。
私が給食だけじゃ足りずにおやつとしてこっそり手作りのタコさんウインナーを持ってきていることを伝えると。
彼は「タコさんウインナーだぁ？」と、ひどく馬鹿にしていて。
しかしひとくちタコさんウインナーを口に放り込めば、彼は「今度は僕の分も作ってきて」と言ってきたくらいだから、相当気に入ってくれたらしい。
時間も忘れるほど話しふけてしまったときには、外の景色の暗さにふたりで驚いて。
「もうこんな時間か」
「わあ……山田くん、帰らなくていいの？ もうお外暗いよ、お家の人が心配するよ」
「？ 外暗いのがなんで問題なんだよ」
「だ、だって山田くん…夜のイケブクロは怖いんだよ？ 悪いオトナたちが蔓延って、綺麗なお顔の山田くんを連れ去っちゃうかも…」
「ああ恐ろしいっ！」と身震いしてみせると「馬鹿だなお前」と、一日に十回くらい言われてるであろう暴言を吐かれ、たまらず胸を痛める。
「な、何が馬鹿なの！ 事実じゃん！」
「はあ。僕は男だよ？ 男が夜道で襲われることなんて滅多にない。何よりお前に心配されるほどじゃないね」
「う"っ…でも、未成年の男子を狙った犯罪も実際に起きてるんだから、絶対に無いとは言い切れないでしょ？山田くん、かっこいいんだから危ないよ」
そう言って「でも安心して。山田くんは私が守るっ」と一昔前の筋肉自慢みたいなポーズをしてみせる。
「ふっる」
山田くんはただひとことそう零して、私の額に一発デコピンを食らわしてきた。
懇親のモノマネしたのにスベッた…！！と、おでこの痛みも相まって悶絶する私を他所に、山田くんはいそいそと帰り支度を始めている。
もう…心からそう思ってるのに。
山田くんはもっと、自分の顔の良さを自覚したほうがいい。
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美月(プロフ) - れいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！そう言っていただけるとすごく力になります。続編の更新頑張りますね。今後の展開も楽しみにしていてください！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
れい - 素敵な話です。こういう話大好きです。言葉の表現の仕方も素敵で読む手が止まりませんでした。今まで一番好きな小説です。これからも応援してます！更新楽しみにしてますね！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: b42eb02cf2 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ぱあたんさん» こんにちは。嬉しいお言葉をありがとうございます！(; ;)これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - 気になったので読んでみましたがとっても面白くて読む手が止まりませんでした！これからも応援させて頂かきます！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - ハネムさん» こんばんは！乱数くんの小説でもコメントくださりありがとうございました。タイトルの意味もキャプションもお話もかなりこだわっているので、そう言っていただけて嬉しいです！(; ;)更新頑張りますね！ (2020年4月24日 23時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月23日 20時
