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翌日、職場でお昼休みにスマホを開くと、チャットアプリに通知が来ている。
(あ…銃兎さんからだ)
『入間銃兎』と、ばっちり本名そのまんまの名前、何の設定もされていないアイコン。そして業務メールみたいな口調のメッセージ。
【銃兎です。AAさんでお間違いありませんか?】
(ちょっと堅苦しい…銃兎さんらしいな)
思わず笑みがこぼれ、【はい、Aです】と返信する。
するとすぐに既読がつき、さらにメッセージが送られてきた。
【急ですが、今週末お時間ありますか?】
その文面に、少しだけドキッとする。
これ、はたから見たらデートのお誘いみたいじゃない? ただの協力者だからそんなはずないんだけどさ。
【空いてますよ】
【なら良かったです。では土曜日の午後三時頃、お迎えに上がります】
すぐさま秒で返信がくるが、用件がよく分からない。迎えに来る? え? 迎えに来るって…何するの?
【えっと、何をするんですか?】
そう送ると、瞬く間に震えるスマホ。
「わあっ、…」
銃兎さんから、通話着信が来ている。急にどうしたのだと驚くが、慌てて通話ボタンを押した。
「もしもし、」
「もしもし。Aさん、お疲れ様です。今お時間ありますか?」
「こんにちは、銃兎さん。大丈夫ですよ」
「なら良かった。先程、何をするのかと聞かれましたが、」
「はい」
「その時になったらお教えします。とにかく貴女は、待ち合わせ時間になったらご自宅の前で待っていてください」
「え、なんで」
「それでは、失礼します」
私が理由を尋ねる暇もなく、ブチッと切られる電話。
嘘でしょ…LINEの文面から見てもそうだけど、めちゃめちゃ要件人間だな…
…あ、教えてくれなかったのってもしかして。
SNSの文面だとか、通話履歴だとか、そういうのに残したくない内容だったのかもしれない。
今回の春日さんのことだって、秘密裏に行っている調査って言ってたもんね。
今週末、何するんだろ。まあ大方、話し合いみたいな感じになるんだろうけど。
「Aさん」
色々と考えを巡らしながらお弁当の中身を食べていたら、背中に凛とした声がかかる。
「! 春日さん。お疲れ様です」
「お疲れ様。お昼休み終わったら私のところまで来てくれる? 部長にはAさん借りるって私から伝えてあるから」
手を合わせて、遠慮がちに頼まれる。
信頼する春日さんの頼み。断らないわけがなかった。
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作者名:美月 | 作成日時:2020年4月15日 21時