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「まあ、人身売買や臓器提供じゃなかっただけ及第点か…」
「何か言いました?」
いつの間にか心の声が漏れてしまっていたらしい。
パトカーの運転席に座る隣の彼に声をかけられ、ハッと背筋を伸ばす。
「い、い、いえ!」
「フフ、そんなに緊張なさらなくても」
ハンドルを握る横顔は、焦る私を面白がるように微笑んでいた。
親愛なる上司を救うため、不思議な三人組に協力することを許諾した約一時間前。
「そろそろ食事にしないか」とやけにキラキラした目で問いかけてきた理鶯さんに、銃兎さんが、
「今日私はAさんをお送りする予定がございますので理鶯の料理は是非とも左馬刻に振舞ってあげてくださいでは私どもはこれで失礼いたします」
と、めちゃくちゃ早口でまくし立て、先程の左馬刻さんのように私の手を引っ張って歩き出した。
「えっ、あ、理鶯さんすみません! また今度!」
腕を引かれるまま軽く理鶯さんに頭を下げる。
「ふむ。そうか。ではまた次の機会に。よし行くぞ、左馬刻」
「い、いや、おい! 銃兎てめぇ! り、理鶯、引っ張るなっ……」
私は銃兎さんに、左馬刻さんは理鶯さんに。
それぞれ逆方向に引っ張られていった。
「理鶯さんって、料理好きなんですね」
「……ソウデスネ」
「? 銃兎さん? 顔青ざめてますけど」
「キノセイデス…」
なんだ、銃兎さんらしくないな。
つい一時間前に出会ったばかりの彼だが、だいぶ感情を表に出してくれるようになってきた。
最初こそ怪しい警察官にしか思えなかったが、物静かに車を運転している銃兎さんの隣にいたら、左馬刻さんに手を引っ張られてる時と似た、謎の安心感のようなものが生まれてきた。
「あの…皆さんはどういった関係なんですか?」
「? 私と、左馬刻と理鶯のことですか?」
「は、はい」
「さっきの様子を見てまさかとは思いましたが…私たちのこと知らなかったんですね」
「? 有名人なんですか?」
彼は少し眉間に皺を寄せると小さくつぶやく。
「そういえば、ついこの前まで海外赴任してたんだよなこの女…」
「え? 何か言いました?」
「いえ、なんでも。我が国のディビジョンのテリトリーが、ラップバトルによって決まっていることはご存知ですよね?」
「ええ、勿論」
「でしたら、ヨコハマディビジョンの代表メンバーは?」
「それは、MAD TRIGGER CREW…ん?」
…あれ?
この3人ってもしかして…
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作者名:美月 | 作成日時:2020年4月15日 21時