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「お心当たりがあるようで」


ジュウトさんは静かにそう言うと、話を続ける。



春日さんは私の会社の女上司だ。営業部のエースで、社長からも一目置かれている。

そのことはジュウトさんも調査済みだったようだ。

そんな彼女が、その組織と何が関係あるのかというと、彼女はその犯罪組織に追われる立場にあるらしいのだ。



「ど…どういうことですか?」

「言うなれば、利用されそうになっているのです。若い女を組織に引き込んで、枕営業でもさせるつもりでしょう」

「っ、…だ、だとしても。どうして、春日さんが追われる必要あるんですか? 闇世界とは程遠い世界にいる方ですよ?」

「そのことに関しては、私にもまだ何とも。警察としての権力を行使し調査した私でさえ、肝心な情報は掴めませんでした。ですから」



ジュウトさんの緑色の瞳が、私を捉える。



「彼女ととりわけ親しい関係にある貴女にお話をおうかがいしたくて、ここまで来させたのですよ」

「…はぁ」



なるほど。警察の権力って、調査の対象の、更にその親しい人たちにまで影響があるのね。春日さんみたいなキラキラした人とちょっと仲の良い部下に、話を聞きたかったと。なるほど。




…いや、なるほどじゃねぇわ!!



「だったら普通に警察署とかで事情聴取、で良かったじゃないですか!! なんでいきなり拉致されて1時間も歩かされてこんな森の中まで来なきゃいけなかったんですか!!」


ま、まあお陰様でイケメンに手を引いてもらえるっていう美味しい思いも少しはできたけど!!怖かったのは事実だし!



「どうしても、署内や別の場所ですと人が多く都合が悪くて、人気のないこの森までお越しいただきました。署内の人間にも情報を漏らしたくなかったのでね」

「はあ…まじなんなのよそれ…」


いつの間にかサマトキさんは私の手を離していたらしく、私は両膝に手をついてがっくりと項垂れた。



「はあ…収穫なしだったな、銃兎。せっかく俺様が車もない中連れてきてやったっつーのに」

「いいえ、全くなしではありません。ここで彼女と面識を持てたのは我々にとって大きな収穫ですよ。左馬刻には感謝です」


そう言って、ジュウトさんは私を見て微笑む。



「申し遅れました、私は入間銃兎。ヨコハマ署組織犯罪対策部巡査部長を務めております。以後お見知り置きを」


一礼した彼の動作はとてもスマートで、腹立たしいことだが思わず見とれてしまった。

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作者名:美月 | 作成日時:2020年4月15日 21時

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