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車内では銃兎さんとの世間話が弾んでいた。

この前左馬刻くんと理鶯さん2人残していった次の日、銃兎さんが左馬刻くんに電話口で死ぬほどキレられたこと、自分はある理由から麻薬汚染を取り締まるために警察になったことだとか、色々なことを話せて楽しかった。


自宅マンションを出発してから約30分、銃兎さんは車を地下駐車場に停めるとすぐさまエンジンを切る。

銃兎さんに連れられ駐車場の階段を上り、やがて私たちは無人のビルに入り込んだ。



「ここは…」



ガラス戸を引くと、こぢんまりとしたロビーの先に廊下が長く続いている。



「ここはMTCのアジトのようなものです。私たちが3人で集まる際には、理鶯のいる森か大抵ここが集合場所になりますね」

「へえ…ここって元々なんかの施設だったんですか?」

「少し前までとある闇取引が行われていた場所でした。まあそいつらは私がすぐにしょっぴいてやったので、今はこうして私たちの好きなように使っているのですが」

「へ、へえ…」

「理鶯はなかなかこの場所には来てくれないのですがね。今日は必ず来いと言って聞かせたので来ると思います」



なるほど。

まさか3人で集まる時は毎回あの森に行ってるのかと思ってたけど、そんなことはなかったらしい。

前まで闇取引が行われていたらしいこの無人ビルは見る限り人っ子一人居ないがらんどうで、でも掃除の行き届いた清潔な空間だった。



「意外と中は綺麗なんですね」

「左馬刻が定期的に舎弟を使って掃除をさせているそうですよ」

「うっ…なるほどそれなら合点がいく」



左馬刻くんって、結構有力者なんだな。そういえばこの前ご飯食べた時「俺はとある組の若頭やってる」とか言ってたわ…。



「この前の一件で、左馬刻とは随分仲良しになったようですね」



目的の部屋まで向かう途中、銃兎さんは私の前を歩きながらそう言った。

後ろ姿からはその表情が窺えない。



「ああ、夕食一緒に行ったときのことですか? 聞いてくださいよ銃兎さん。あの日、職場から帰る時無理やり左馬刻さんに車の中押し込まれたんですよ?あんなの半分誘拐ですよ誘拐」

「…」

「まあ結局美味しい料理ご馳走になったし、美人の女将さんを拝めたし、それなりに楽しかったから結果オーライだったんですけど」



それから部屋に着くまで、銃兎さんは何も返事をしてくれなくなった。

私何か変なこと、言ったかな。

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作者名:美月 | 作成日時:2020年4月15日 21時

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