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美味しい。美味しすぎる。
次から次へと運ばれてくる料理がそれはもうどれも絶品で、私は夢中でご馳走になっていた。
「やばい…美味しい…」
「言葉もなくすほど美味いだろ？」
「うん…やばい…」
お酒も料理の素材も一級品なんだろうけど、味付けも盛り付けもかなりこだわっているに違いない。本当に美味しい。それしか言えない。
「好きなだけ食えよ」
「ううっ、左馬刻さんありがと、」
ああ、残業終わり、こんなにも美味しい料理にありつけるなんて…しかも左馬刻さんの奢り…
これだけ頼んで大丈夫だろうかと心配したが、裏の世界に通じた人達って結構お金持ってそうだし、ここで「お金大丈夫ですか」なんて聞いたら「てめぇ俺様が女ひとりに飯食わせられねぇとでも思ってるのか」とか怒られそうだからやめておこう。
「もぐもぐ…それにしても、左馬刻さんって、ヤクザなのにヤクザっぽくないところあるよね」
「あ？」
「私、ヤクザってもっと目合うだけで人をヤッちゃうような人ばかりだと思ってた。でも左馬刻さんはそういう感じでもないじゃん (常に不機嫌そうな顔してるけど)。意外と優しくてびっくりしたの」
「…まだてめぇが知らねーだけだろうよ。ヤクザなんて俺含めてどいつもこいつもやべー奴ばかりだ」
「？ ふうん、そうなんだ」
「俺だって
「ええっ、だって左馬刻さん、私より歳下でしょ？ 憶測だけど」
「…25だが」
「やっぱり歳下だ！」
私は日本酒を流し込み、高らかに声を上げる。
「私、27なの。初めて左馬刻さんを見た時、ルックスの感じからして歳下かなぁって勝手に思ってた」
「…そうかよ」
「うんうん。やった〜私年齢当て得意かも〜」
アルコールの回った頭は、いつの間にか意味の分からない発言を次々とさせる。そのことにこの時の私は決して気づかないのだ。
「これから左馬刻くんって呼んでもいい？」
「あ"？ てめぇ俺に『様』をつけろって何度言ったら、」
「歳下に『様』をつける筋合いありませーんっ」
そう言って、「ほら、もっと飲みなさい左馬刻くんっ」と、空になっていたお猪口に日本酒を注ぎ込む。
「…調子乗りやがって」
「えへへっ」
口ではそう言う左馬刻くんだったけど、その口元はいくらか緩んでいた気がする。酒の回った私の勘違いかもしれないけどね。
2人の夜はまだ続く。
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作者名：美月 | 作成日時：2020年4月15日 21時
