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昼休み終了後、春日さんの受け持つプロジェクトにまつわるちょっとした雑事を手伝った。

約15分ほど経つと「あとは私がやっておくから。ありがとね、Aさん。助かったわ」と笑って、私を持ち場に戻してくれた。


春日さんは本当に優しい。部下に決して驕るような姿勢を見せず、それどころか気遣ってくれる。私が仕事でミスをしても、代わりに頭を下げてくださることも幾度となくあった。

おまけに春日さんはとても美人だ。明るいブラウンのカールされたロングヘアとかき上げられた前髪が良い女感を溢れさせてやまない。

身長もスラッと高くて、長い足にはハイヒールがよく似合っている。

高学歴で仕事もできておまけに明るくて優しい。

職場の男性のみならず女性までも虜にする、春日さん。完璧って言葉で言い表すのが勿体ないくらい、春日さんは素敵な人なんだ。



「春日さんは…どうしてそんなに優しいんですか?」



いつしか二人で夕食を食べに行った日に、お酒の回った頭でそう尋ねたことがある。



「あははっ。褒めてくれてるの? 嬉しい」

「いや、だって本当に…優しいから」

「別に誰彼構わず優しくするわけじゃないわよ」

「そ、そんなこと」

「特にAさんは素直だし、仕事に対しても人一倍真面目だから、そりゃあ可愛がりたくもなっちゃうわ」



そう言ってわしゃわしゃと頭を撫でてくれたのを、今でも鮮明に憶えている。

きっとどんな部下に対してもあんな感じなんだろうけど、その時のひとことに救われ、今でもこうして彼女の元で働くことができている。

あの後私感激して泣き出しちゃって、慌てて宥めてくれたよな。彼女は嫌な顔全然見せなかったけど、あの日は迷惑かけたなぁ。



…そんな春日さんが、銃兎さんのいう『犯罪組織』に追われてるって。一体どういうことなんだろう。

この前はそこまで聞けなかったけれど、今週末、もっと深いところまで尋ねてみよう。

春日さんのこと、守りたいもの。





「お疲れ様でした」


定時から約1時間ほど残業して、私は会社のロビーを出る。

退社する人々の向かう先は大体が駅の方向。

私と同じく残業したのか、その顔は疲れ切っている。



「……(私それなりに長くこの会社いるけど、全然要領良くならないんだよな)」



残業の日々は変わらない。なぜだ。私の人生設計では入社してから約数年で定時上がりとか当たり前になっているはずだったんだけど。

自分の情けなさにため息が出る。

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作者名:美月 | 作成日時:2020年4月15日 21時

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