執着。4 【安室透】 (ページ10)

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宝＊130 ページ10

「降谷零君……それが、君の言う安室さんという男だ。
　そうだろう？」

最初の一文は私に向けて。そして確認するように電話の向こうへと言う。
なにそれ。なんで名前が違うの。どういうこと？
安室さんは本当に悪い組織の仲間で、嘘で私に優しくしてくれていたの？

「っ……」

赤井さんが安室さんと話しているその膝の上で、
彼の胸元をぎゅうううっと力を込めて握った私の目には涙が浮かぶ。

「あむろさんには……みっつの名前が、あるんですか」

さっき赤井さんは、最初に電話の相手に向かって"バーボン"と呼びかけた。
そしてその次に"安室透"君、最後に"フルヤレイ"君だと。
フルヤレイというのが本名らしいけど、それなら安室透とは一体なんなのか。

……私を助けてくれたのは、一体誰なの？

「……まあ、そうなるな」

「でも、全部が全部、嘘じゃない……」

悪かったと思っている、と言い終わると私の声に反応した赤井さん。
涙で潤む視界の中、首を傾げている赤井さんが薄らと滲んで見えた。

「私は、安室さんに救われたんです……。
　安室さんが例え何者だろうと、私は彼のことが大好きなんです」

ほぉ、と笑みを浮かべた赤井さんは、一度降ろした携帯を再度耳に当てる。

「随分好かれているようだな。
　まさか自分の膝に乗る女から他の男への告白が出るとは、驚いた」

言うと彼は、向こうから怖い声の響くスマホを私の耳に当てた。

『＿＿＿＿のか、赤井！！』

「……あむろさん？」

恐る恐ると声を発した私に、電話の向こうで彼が驚いたのが伝わった。