執着。4 【安室透】 (ページ18)

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宝＊138 ページ18

ひとつの間を開けて、謙三さんは私を一瞥すると続ける。

「……A、お前はまだ高校生なんだ。
　日付を跨いでからの帰宅はいただけない」

「はい……ごめんなさい」

「安室君もだ。高校生をこんな時間まで連れまわすものではない」

「申し訳ありません」

ふたり揃って頭を下げると、はぁ……と向こう側から謙三さんの大きなため息がかかる。
同時に遊佐さんが部屋へと入ってきて、安室さんと私の前にお茶を出す。

謙三さんの気に入っている、静岡県のお茶だ。

謙三さんにもおかわりのお茶を継ぎ足すと遊佐さんは部屋を出る。
また苦しいほどの沈黙が続くのかと思いきや、
今度は安室さんが「謙三さん、お話が」と口を開いた。

なんだ。と無言で問いかけた謙三さんは、じぃっと安室さんを見つめている。

「まずは、この遅い時間にお孫さんを外に連れ出したことを謝罪します」

「もうよい。
　何事もなく帰ってきたのだから怒ってはおらん」

「ありがとうございます」

姿勢正しくお礼を告げた安室さんは、珍しく緊張したように小さく深呼吸をする。

「僕は、Aさんが好きです。
　この世でただひとり、愛する女性です」

「！？」

唐突に飛び出した安室さんの言葉に驚いた私とは正反対に、
謙三さんはただ黙って腕を組み安室さんを見つめているだけだ。

安室さんは続けた。

「叶うなら、彼女とお付き合いしたいと考えています」