執着。【安室透】 (ページ34)

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宝＊34 ページ34

蘭さんより少し遅れて、その中身を理解した私は身体の震えを抑えられなかった。
安室さんが「落ち着いて」と言いながら私を正面から抱きしめるようにすれば、
少しずつ収まっていく波だった心。
けれど震えは、収まらないままで。

「……っ」

安室さんの背中に手を回し、ぎゅっと抱き着く。
自分の身体が震えているのがわかり、少しだけ腕に力を込めた。

先程見たスーツケースの中身が脳裏に浮かぶ。
安室さんは、いつもああいうのを見ているのだろうか。

「なんで遺体がスーツケースに入ってんだよ！」

毛利名探偵のそんな声が聞こえ、次いで「誰なんだ？この男」という言葉。
安室さんは私を抱いたまま男性の特徴や死因などを言い始めた。

私を抱く腕や声は確かに私の知っている安室さんなのに、
その言葉一つだけで、彼は私の知らない人になってしまった。
探偵、安室透は、私の知る安室透とは全くの別人だった。

いつだって笑ってて、優しくて、穏やかで。
こんな怖い話を淡々とするような人じゃなかった。
これが、彼の本来の姿なのだろうか。

「…………」

私がそう考えている間にも彼らの話は進んでいて、
どうやら、コナン君が樫塚さんに誘拐されたらしいと蘭さんが慌てていた。

「少し落ち着きましたか？」

「ん……」

たとえ別人のようでも、安室さんは安室さんだ。
私の大好きな人ということに変わりはない。

この温もりは確かに、私が前から知っているものなのだから。

「……？」

あれ？私今、なんて？
どうして安室さんのぬくもりを、前から知っているなんて思ったの？

もんもんと飛ばされていた意識は、蘭さんの「そうだ！」という声に引き上げられた。

「阿笠博士ならコナン君の居場所、わかるかも！」

「阿笠博士？誰です、その人」

蘭さんはそのアガサハカセについて説明してくれる。
すごい人だなと話半分で聞いていた私は、
それよりも安室さんのほうが気がかりだった。