世にも奇妙なプロポーズ ページ43
「A」
開け、ごま。と唱えた記憶はないのに今まで重く硬かった扉が、ほんの少しの力でスライドする。ぴしゃりと音が鳴って止まった扉の前にコネシマ君がいた。耳が、赤い、
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・
「好きやで」
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なんで、よりにもよって目を合わせて言ってくるのだろう。私がその快晴に弱いこと知っているみたい。ずるい、ずっるい。その焦げた肌も金髪も今、最高に愛おしい瞬間を迎えてしまった。
扉という壁がなくなったコネシマ君の腕が伸びる。しっかりと引き寄せられて彼の胸板に埋まる。この瞬間を、どれだけ待ちわびたか。あぁ太陽に触れてしまった、熱い。
『…コネシマ君、コネシマ君っ』
「言い逃げなんて許さん。訂正なんてさせへん。なぁ、A、」
コネシマ君の熱い吐息が耳元にかかる。ぎゅっと抱きしめられ、彼の良い声が側で聞こえて心が騒ぐ。
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・
「待っとったで」
私が君を好きになる、その瞬間を。
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・
・
結局、あのぬいぐるみはどこにもいなかった。でも、確かにいたのだ。急いでリュックを確認したけどぬいぐるみ本体がついていないボールチェーンだけのキーホルダーと化していた。それでもコネシマ君は私を安心させるように、
「なぁ、もう大丈夫やろ」
『どういうこと？』
「ここに来る前、隣のクラスのよう知らん女子に告られたんやけど」
すぐに誰のことかわかった。きっと香水の匂いが強い、彼女だ。
・
「でも、断った」
コネシマ君の瞳がひとつ、ふたつと瞬く。そんな姿を見ていたら何だか力が抜けてコネシマ君の背中に体を預ける。彼はそんな私を受け止めながらケラケラと笑って、手を取って歩き出した。そうか、君は私を選んでくれたんだ。
・
「もう何も、起きひん気がすんねん」
と、何の根拠もない理屈を述べながら応援席まで戻る。本当に、なんの根拠もない。けど何故だか本当にもう何も、怪異が起きないような気がする。
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・
『コネシマ君、ありがとう』
ありがとう。呪いをといてくれて。私に恋という名の魔法をかけてくれて。扉を開ける呪文を唱えてくれて。必然が重なって掴んだ偶然を大切に折りたたむ。
何も言わない代わりに、繋いだ手に力が込められた。
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@眠猫。(プロフ) - 弓矢さん» 最初はホラーと恋愛の混合が難しく、挫折しそうになりましたがそう言っていただけて本当に最後まで書き続けてよかったなと思います。しばらく更新の予定はないですが、どこかで番外編など書けたら楽しそうだなとは思います。その時はまた、読んでいただけると幸いです。 (2022年1月10日 20時) (
レス) id: 91126b09d4 (このIDを非表示/違反報告)
弓矢(プロフ) - みんなかわいくて素敵で好きです。私の少ない語彙だと上手く言えませんが、空気感も好みで尚且つそれが直に伝わる様で読んでてとてもゾクゾクしました。最後の方もゾクゾクしつつも一周回ってワクワクしながら読み進めました。とても面白かったです。有難うございます。 (2022年1月8日 8時) (レス) @page50 id: 8d1caf834f (このIDを非表示/違反報告)
@眠猫。(プロフ) - 李白さん» 初めまして。この度は数ある作品の中から私の作品を読んでいただき、ありがとうございます。完結して2か月ほど経ちましたが、まだこのような言葉を頂けることに感無量です。お時間ありましたら是非、また覗いてやってください。またどこかで会えますように。 (2022年1月2日 20時) (レス) id: 91126b09d4 (このIDを非表示/違反報告)
李白 - 初めまして。作品全て読みましたが解説を見て鳥肌が立ちました。最高です。この作品に出会えて良かったです (2022年1月1日 11時) (レス) id: 1cec622168 (このIDを非表示/違反報告)
@眠猫。(プロフ) - このはさん» 返信遅くなりました。この度は私の作品を読んでいただきありがとうございます。練りに練ったお話だったのでそう言っていただけるととても嬉しいです。またどこかで会えましたら、よろしくお願いします！ (2021年11月16日 22時) (レス) id: 91126b09d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：@眠猫。 | 作成日時：2021年8月28日 17時
