その娘、怪盗につき。

復讐には復讐を。4 ページ20

「いらっしゃいませ…あら、お父様」



「今日はAを迎えに来たんだが」



「それなんですが、娘さん途中で出ていかれたみたいで…お代はいただきましたがこれ、忘れ物みたいです」



30分程前にルパンから連絡を受けてAを迎えに行った。丁度近くの店にいた為時間はかからなかったが、店員から渡されたものを見て驚いた。




.357マグナム弾。




彼の使用するS&W 19、通称コンバットマグナムに使用される銃弾だったのだ。
何故、彼女がこれを…不審に思って弾を確認してみると
薬莢から弾頭が意図も簡単に外れた。
そして中から出てきた紙には察するに最悪の事態と懐かしい名前が書いてあった。




「…グリズリーか」



短い文章の後に「G」の文字と何かで引っ掻いたような後がある。次元には心当たりがあった。


数年前、まだ彼が殺し屋としてその日暮らしの生活をしていた頃の話だ。たまたまとある男とターゲットが被ってしまったことがあった。これは依頼側のミスなのか、はたまた狙って彼らに殺し合いをさせるつもりだったのか真偽は定かではないが…その男がグリズリーだったのだ。
彼らは聞かずとも自らがする事はわかっていた。
ターゲットを殺して相手も殺す、決して目撃者を残してはならない。
結果、報酬を受け取ったのは次元だったがグリズリーを確かに仕留めたはずだった。
しかし今、生きている。そしてAを人質に復讐を始めようとしている。



グリズリーの本名はジョン。
ならばなぜ彼がグリズリーと呼ばれるようになったのか。
理由は2つ。
1つはターゲットを判別不能になるほど引き裂くことからくる身の毛もよだつという意味の「Grisly」。
2つ目はその行為が熊、つまりグリズリーベアのようであることからくる「Grizzly」。
という２つの意味を込めた通り名である。




「生きていたとはな」




沈み始めた夕日を背に、教会の前に車を停めた。
避けられないであろう戦闘の前に彼は拳銃に弾を込め直す。彼女の安否の心配と卑怯な手を使う相手への怒り、言い表せぬ感情を抱きながらも彼は冷静を欠かなかった。




────今度は確実に仕留めてやる。




目には目を歯には歯を。
復讐には復讐を。

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