その娘、怪盗につき。

復讐には復讐を。5 ページ21

「早かったじゃねえか、猟犬」



「俺は犬じゃねえ」



暗がりからの声に次元は答える。
教会の中は薄暗くなっていてグリズリーとAの姿は見えない。



「久しぶりだなぁ？その様子じゃ相変わらずか？」



「昔話をしに来た訳でもねえよ」



敵意を隠すことも無く、背に手を回す次元。
まだこの闇に目が慣れないせいかはっきりと相手を捉えることは出来ていない。



「そう慌てるなよ、俺は嬉しいよお前に会えて」



「…Aは？」



彼は一切与太話に応じる気は無いようである。
ジリジリと距離を詰めていくとグリズリーとAの姿が見えるようになってきた。



「いるぜ…おっと、それ以上近付くとこの嬢ちゃんが穴だらけになるぞ」



「A！！！」



彼に銃を突きつけられているAは、縛られていて口には猿轡をされている。服は無惨に切り裂かれていて所々肌が見えている部分があり少し傷も見える。
それでも意識はあるようで、何か言いたげにこちらを見据えている。



「銃を足元に置け、妙な真似したら…わかるだろ？」



「全く、悪趣味なのは変わらずか？」



悪態をつきながらも次元は愛銃を地面に置き、数歩下がった。



「フフフ…お前を殺す前にひとつ昔話をしよう、覚えてるか次元」



「よせよ、お前みたいな奴との昔話なんて思い出したかねえぜ」



「そう言うなよ、冥土の…いや、地獄への土産…くらいにはなるだろう」



勘弁してくれと次元は両手を挙げる。
グリズリーは銃をAから彼の方へと向けた。

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