その娘、怪盗につき。

異次元の炬燵。2【500hit記念】 ページ16

思わず持っていた雑煮を落としそうになった。
ルパンは変装やら偽物やらで増殖するのを何度か見た事がある。見たことはあるのだが。



「あと何個足りねえんだ？」



「おいおい、俺のが先に待ってたろ」



「結局酒はどーなったんだ？」



「だから俺に聞くなよ」



ここにいる次元達は変装でも偽物でもないような気がする。顔も服も帽子も違う部分はあるが、全員本人である事は確かだ。彼らがそう言わなくても、立ち振る舞いからしてそれは事実であろう。だからこそ、




次元まみれ。次元だらけ。次元大介大集合。




という状況に戸惑ってしまう。
正直な話、彼女はいつも自分の隣にいる彼が一体全体どの彼なのかわからなくなっていた。
いや、むしろ全員なのかもしれないが。



なんだか頭がくらくらしてきた。



「ごめん、足りない分もってくるね」



そう言って勢いよくドアを閉めた。
キッチンに戻って、顔を洗った。
タオルで顔を拭きながら、彼らは「お前が待っていろと言うから大人しくこたつに入っていたんだ」と口を揃えて言ったのを思い出した。
残りをつくって、部屋の前に戻った。
とにもかくにも、冷静に対応しよう。
慌てると彼らのペースに巻き込まれかねない。




深呼吸をして、ドアを開ける。








「おー、待ちくたびれたぜ……って1人でそんなに食うのか？」






炬燵に入る彼は1人。
先程までの人口密度とは打って変わって静かになった部屋。





「意味わかんないよ…」






一気に身体の力が抜けて、雑煮をトレーにのせたままへたり混んでしまった。
急に崩れ落ちた彼女に驚いた”いつもの”次元が炬燵から出てくる。






さて、最後に残ったのはどの”次元”？

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