渾身の叫び ページ32
．
しばらく見つめ合う。なぜ永瀬がこんなに固まってるのかわからなかった。
私の視線に耐えられなくなったのか、あーーーとセットしたであろう髪をぐしゃぐしゃと掻き毟った。
「お前わざとやっとるやろ！」
『え、だ、だって呼べって言ったじゃん！！』
「不意打ちはあかん！！！」
『じゃあ今から廉って言うよ？って言うの？え、そんなことある？』
「うるっさいわアホ！」
完璧な八つ当たりだ。意味がわからない。
なんだかおかしくなって笑えば彼も同じように笑った。なんだか幼い頃からずーっと、物理的ではなく精神的に一緒に過ごしてきた不思議な気分になった。
ご飯を食べたら明日のテストの範囲の確認をして。ちょっと不安なところは永瀬に教えて貰って。テスト前日のくせにちょっとゲームして。
ダラダラと過ごしていればもういい時間だった。
「…じゃあ俺帰るわ」
『どうぞ』
「は？寂しがれや」
『…なんで？』
「廉くんまだ一緒におって、って」
『寒い。ばいばい』
「じゃーな、明日も来るわ」
『え、やだ、ってちょ、永瀬廉！！！』
私の渾身の叫びも彼には届かなかった。
玄関が閉まる直前ニヤニヤとした永瀬と目が合った。明日はチェーンでも閉めて彼に徹底的な対策を取ろう。そうしよう。いや、優太とお昼を食べて帰るのもよしだ。
きっと今の私はものすごく気持ち悪い顔をしている。
このなんとも言えないワクワク感は、明日のこの時間を楽しみにしているからだろう。
邪念を消すようにバチンと頬を両手で挟むように叩いてもう一度確認をしようとプリントを開いた。
どう気を建て直しても中々勉強に力が入らなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 912人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくさくぱんだ(プロフ) - 完結おめでとうございます！読み度涙が止まりませんでした…。続編是非読みたいです!!!! (2020年1月3日 5時) (
レス) id: e39a486ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ふみか(プロフ) - 完結おめでとうございます。続編本当に待ってます！！！！！！一生のお願い！笑笑 (2019年12月15日 23時) (レス) id: cdb1cf462c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - 完結おめでとうございます！afterstoryぜひ読みたいです☆ (2019年12月15日 15時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - 思わず一気読みしてしまったんですが、泣いてしまいました(;o;)是非after story読みたいです！ (2019年12月15日 13時) (レス) id: dfd709edb9 (このIDを非表示/違反報告)
ちな - 完結おめでとうございます！最後キュンキュンもしたし、涙も出てきて………時間があるのなら、アフターストーリー読みたいです！楽しみにしています！！ (2019年12月15日 9時) (レス) id: 047315094b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柚木 | 作成日時：2019年10月16日 22時
