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「わ、私がリレー?」
「永瀬にときめかない女って言われて、中川さんしか思いつかなかったんだよね」
「なにそれ、永瀬にとにめかない女ってそこら辺にいない?あ、いないか」
翌日の朝に一人席に着いていた彼女に声をかけた。
あははは!と豪快に笑う中川さんにつられて笑う。中川さんはバレー部らしい。
いい意味で女の子らしくない彼女は永瀬にときめくなんてありえないと思っているというのを風の噂で前に聞いたことがあった。
「…えーと、リレーだっけ?私でよければ。」
「ほんと!?ありがとう中川さん!!!」
「中川さんなんて堅い堅い。祐希でいいよ?」
「あー、じゃあ、よろしくお願いします」
「Aだよね?よろしく」
ショートカットである彼女は周りからイケメンと称されていた。
なんとなく、わかる気がした。
見た目だけじゃなくて中身もイケメンだ。
躊躇うことなく差し出された手を握れば思いっきり振られた。
痛かった。運動部こわい。
「おっ、なに、A友達できたの?」
「だるい。」
「照れんなって」
祐希とそのまま当たり障りのない会話をしていると後ろからバッグハグのようなものをされる。
ようなもの、であって決してそうではなかった。
首に巻きついてくる腕は私を窒息させようとしているのだろうか、ぎゅっと締め付けてくる腕に爪を立てた。
「いって、!は??」
「だるいきもいきもいだるい」
「酷くね?え、こいつ酷くね?」
優太は私に指を指しながらぼーっと私たちのやり取りを見ていた祐希に話しかけた。
そういや優太と祐希が話してるところ見た事ないな。まあでも2人のコミュ力ならそんなのなんてことないだろう。
「…誰だっけ?」
「うわお前もひどいな、岸優太。きしゆーた」
「ふーん。Aのこと好きなんだねぇ?」
「はっ、ちょっ…!!」
「…え?2人付き合ってんじゃないの?」
「…あーーそうだった!あいや、なんでもねぇ!!うん、めっちゃ好き」
見てられない。照れた、とかじゃなくてくだらない。
2人から背を向けて席に着こうとすればばったりと永瀬に会った。
「おはよ」
「あ、永瀬おはよ」
「元気?」
「うん」
「生きとる?」
「うん」
「おっけー」
頭をぽんぽんして横を去っていった永瀬をぼんやりと見つめた。触れられたところに未だに永瀬の感触が残っていて不思議な気持ちになった。
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作者名:Kaede | 作成日時:2019年9月24日 20時