一之瀬side ページ6
夏香が監督とどこかへ行ってしまって、その場に取り残されてしまった。
「何があったの？」
「分からない」
「監督が言った言葉に、あの女の子泣いちゃったよ」
選手たちがそう話をする。
「夏香、やっぱり大丈夫じゃないじゃん。」とつぶやいた。
近くにいた高松さんが「何かあったの？」
「彼女、先月といっても３週間前に最愛の人を亡くしているんです」
「えっ？」
「病気だったんですが、治るって思っていたんですけど、亡くなってしまって、夏香にとってはたった一人の…」
と言いかけたところで監督が戻って来た。
すぐに選手を集め、練習のまとめをして解散となった。
選手たちはまだ自主練をするみたい。
監督から待っててもらえる？夏香と話してくるからと言ってまた行ってしまった。
また取り残され、体育館の隅っこの方に移動して帰ってくるのを待つことにした。
するとクリスがやってきた。
「お疲れさまです」
「練習見に来てくれてありがとう」
ドキドキする。好きな選手がこんな近くにいるなんて！！
「最近、よく来てるよね？」
「覚えているんですか？」
「いつもかけてくれる言葉がシンプルだから」
「え笑」
「シンプルでも、ちゃんと伝わる言葉を使ってくれるから覚えてるよ。他の人とは違うなーって思う」
「それは嬉しいです(笑)」
「今日は友達とだったの？」
「そうなんです、友達を誘って来たんです」
「あの子どんな子なの？」
「夏香は優しくて、穏やかで、頭の回転が速くていい友達ですよ。けど最愛の人を亡くしてから、無表情で感情が無くなってロボットみたいになってしまったんで、連れてきたんです。
彼女、バレーをやっていたんですよ」
「友達のことを大切にしているんだね。あの子バレーやっていたの？」
「夏香はとっても凄い人なんですよ！本人は謙遜するけど。今日も練習見ながらノートに攻撃方法とか書いてましたもん。英語とドイツ語とか彼女にしか分からない言語で書くので見ても分かりませんけどね笑」
そう、夏香はとてもすごい人なのだ。
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作者名：yuzu | 作成日時：2017年8月1日 16時
