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「暗いね…」
「…夜ですからね」
「…」
敦は思った。この人…Aさんは僕のことが嫌いなのだろうか。
同じ学校という設定なのに、僕にだけどこか余所余所しい彼との距離を縮めたくて。
どうにか会話を繋ごうと考え、
「明日は満月かな。ほら、月」
とか
「夜の学校が怖いって本当なんだね」
とか。
歩きながら話しかけてみても、
小声で話す僕の10分の1くらいの声で
「夜ですからね」
と返してくるだけ。
しかも、だんだん返してくる声に怒気が含まれているような気がして。
「、あのさ、」
「ッチ」
ひえ…
挙げ句、舌打ちまでされてしまった。
ふと、懐中電灯の明かりが2つ…それとは別の明かりがAの顔を照らした。
彼の携帯電話から発される、画面の光だった。
ちょいちょい、と肩をつつかれて眩しい画面を目を凝らして見れば、メール画面に文字が打ってあった。
“わざわざ夜に捜査する意味わかってます?”
敦は、う”、と小さく唸ってから「ごめん」と呟く。するとまた目で訴えられる。
「静かにしろって云ってるだろ」。
彼から発せられる鋭いナイフのような視線、丁寧ではあるが毒を含んだ言葉。その全てが、敦の心の柔らかい部分を抉るようだった。
日々の仕事で慣れているのだろう、暗闇の中でも迷わず歩を進めるAに手首を掴まれ、引き摺り込まれるようにしてある部屋に入る。
そこは生徒達が寝ている部屋とは1館離れた、防音の音楽室だった。
Aがバチンと部屋の電気をつけ、敦が急な明かりに目を瞬かせる。
Aは後ろ手でドアの鍵を閉め、
ふっと溜め息をついて通常の良く通る声で口を開いた。
「何かありました?」
「へ、」
敦の気の抜けたようなような声に、気を悪くした様子のA。
敦は気が付いていた。この合宿に潜入してから見つけた、彼の癖。
気に入らないことがあると、にこやかに微笑んでからゆっくり薄目を開けるのだ。口は楽しく、そして優しげに弧を描きながら、全く笑っていない目を薄く開けて相手を見るのだ。
与謝野先生の治療と並ぶ程に怖い。
それを僕は今やられている。敦は恐怖から全身に鳥肌を立てた。
「…今、意味もないのに長い廊下を歩いてきたと思ってるんですか?」
「…だって、」
「だって、ですって?」
言い訳は許さん、と云わんばかりに声をあげたAが敦を黙らせた後、心底面倒臭そうに説明を始めた。
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蟹江(プロフ) - あまねさん» ありがとうございます(o;д;)oウワァア((深夜で頭沸いてますゴメンナサイ (2020年8月25日 0時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
あまね - 完結おめでとうございます(遅い)!この作品文ストの中で一番好きです!!しかもハイキューとのクロスオーバー……面白かったです!!こんな素敵な作品をありがとうございました! (2020年8月24日 21時) (レス) id: 138e71a309 (このIDを非表示/違反報告)
蟹江(プロフ) - 花蓮さん» 最後まで読んでくださりありがとうございましたo(*⌒―⌒*)o続編は…無理そうかもです(´ヘ`;)稲荷崎方言だからニガテ… (2020年7月24日 15時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
花蓮 - 完結おめでとうございます!!!ずっとこの作品を読むのを毎日の楽しみにしていたので、寂しい気もしますが、嬉しいです。稲荷崎の続編も蟹江さんが良かったら、是非書いて頂きたいです!!これからも更新応援してます。 (2020年7月24日 13時) (レス) id: 65f516d7e9 (このIDを非表示/違反報告)
蟹江(プロフ) - 鏡月夜紅さん» かけもち作品減らそうと思って無理矢理終わらせましたすみません( ノД`)…続編も書きたいけど余裕がない!気が向いたらまたクロスオーバー書きたいと思ってます(°▽°) (2020年7月19日 11時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蟹江 | 作成日時:2020年4月21日 1時