不自然 ページ19
『あの、その、』
私のパソコンの画面をジロジロと見て、ふーんほぉー？と太宰さんは声を上げる。
たまにちらちらこちらを伺ってくるのが、少しだけ苛つくが、それは別案件だ。
｢安心しなよ！国木田くんには云わないからさ｣
『そ、それは有難いのですが…』
第一に気にしていた事を見抜かれて、何も云え無くなり云い淀む。
｢…黒髪か｣
『えっ』
｢被害者の髪色｣
太宰さんはほら、と被害者の顔写真を指差す。外套は少し濡れていて、雨が降っていることを知った。この人、仕事サボったんだな、少し呆れ気味に溜息を吐くと、さらに続けて太宰さんは云う。
｢あと皆、目が細い｣
『貶してるんですか…』
｢違うって〜｣
ちゃんと話を聞き給えよ！太宰さんは態とらしく怒った。
善処します、と一言謝り、パソコンの中の写真をジロジロと観察。
髪が皆黒い事に着眼していたが、東洋独特の目の形は気付けなかった。
｢外国に行くと、日本人の男性が向こうの男性に人気あるって聞くでしょう？｣
『ええ…良く聞きますね。ナンパされたとか』
｢引けを取らず日本人の女性も、ミステリアスで甚く人気があってねぇ｣
｢向こうの市場では、大層高値が付くそうだ｣
太宰さんはすう、と目を細めた。
｢里見��、君の友人だね｣
『……！』
見つかっていた。
何時かは云う心算はあったつもりだ。友人が被害者だと云うのを進言すれば、さらに進展する調査もあるかもしれない。
だけれど、被害者が自分の知己、個人的な感情を持ちながら探偵社の仕事をするのは厭だった。
『…はい』
｢今日、探偵社で此れと全く同じな被害者リストが公開されたんだ。
その中でも、里見��は一切の親族が居ないそうでね、彼のプライベートな事が全く分からなくて、この誘拐事件に関係があるのかすら分かったものじゃない｣
『…矢張り、云うべき、ですか』
｢嗚呼｣
太宰さんは確り頷く。
『友人と云えど、私は友人として、彼の事をよく知らないんですよ』
｢君は何も分かっちゃいないなぁ。
彼の同僚らは、彼の一人称もあやふやだったと云うのに｣
その言葉に、愕然とした。
学生時代は友好的で友達も少なくなく、どんどん外へ外へと行く質だったさとみが、閉鎖的になっていたなんて。
｢彼の学生時代も手当り次第に当たっている様だけど、凡て関係を絶たれていてね｣
潔いまでの人脈関係の切除、必然的に向けられる私への照明。
まるで、この事件に関わるよう仕向けられている様に感じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 183人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しほ - こんばんは。更新楽しみにしています！ (2020年9月27日 23時) (
レス) id: 9cd3767a9b (このIDを非表示/違反報告)
愁(プロフ) - 更新、楽しみにしています。ゆっくり頑張ってください。応援してます。 (2020年9月20日 8時) (レス) id: c803c24e20 (このIDを非表示/違反報告)
ＢＢ８９ - 更新、楽しみにしています！ (2017年3月31日 8時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
ＢＢ８９ - 面白いです。 (2017年3月22日 0時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
和 - イッキ読みさせていただきました！とっても面白いです！これからもがんばってください (2017年2月24日 22時) (レス) id: 70dae8966d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒蘭夢 | 作成日時：2017年2月23日 3時
