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否定はしない ページ2

そう云えば、とふと思い出す。
最初に仲直りしろ、とか、好きなんでしょ、とか云ってきたのは乱歩さんだったな、と。
今思えば的を得ていた事を随分大人数の前でズケズケと云ってくれたものだ。

「Aさん、キーボードを打つ手が止まっていますわよ。目が痛むのですか?」

『いえ、唯少し、感傷に浸ってまして……良きサマリア人に出会えたな、と。』

「サマリア…?」

聖書は読みませんか?とナオミさんに問えば「一度も」とキッパリとした回答を頂いた。

『銀貨二枚ほど頂いたと云うだけですよ』

くすくすと笑って云えば、ナオミさんはぽかんと首を傾げる。愛らしい彼女にその行動は似合っていた。
だけれど暫くすれば、何事も無かったように事務業務に向かう。今では手をテキパキと動かして事務仕事にと専念してい所だ。

時間をちらりと、目だけを動かして見遣る。
丁度昼過ぎ、夏の昼下がりは暑くて茹でダコになってしまうほどだが、太宰さん達は大丈夫だろうか。出ていってもう三時間は経っている。

「気になりますの?」

ハッとすればにまにま笑うナオミさんの顔。
たった今書類と睨めっこしてたのに、いつの間に私の顔を見たのか。

『何のことでしょう…』

「決まってますでしょう!!太宰さんの事ですわ!この十分で三回は確認してますわよ」

『……仕事に集中してください』

はー…と肩を落として溜息を吐くと、これはしめたと云わんばかり「否定しないのですね!」と更に目を輝かせる。

この子は……こんな子だっただろうか。
そのキラキラとした目を気にせずにタイピングを続けるが、視線が五月蝿い。

「…ここだけの話にしますわ。」

何やら神妙な面持ちのナオミさん。
思わず振り返ってしまう。

「本当に、太宰さんの事が好きではありませんの……??」

煌めく視線はそのまま、神妙な面持ちを持ちつつ尋ねてくる様は本当に探偵で……。
女学生は恋話が大好きだと、以前さとみに聴いたことがあったが……そこまで好きなのか。

『…ナオミさん』

「……はい」

『二十過ぎてからの惚れた腫れたは、難しいのです』

「…それって」


好きって事ですのよね…??


(……否定はしない)

※→←しばらく



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しほ - こんばんは。更新楽しみにしています! (2020年9月27日 23時) (レス) id: 9cd3767a9b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新、楽しみにしています。ゆっくり頑張ってください。応援してます。 (2020年9月20日 8時) (レス) id: c803c24e20 (このIDを非表示/違反報告)
BB89 - 更新、楽しみにしています! (2017年3月31日 8時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
BB89 - 面白いです。 (2017年3月22日 0時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
- イッキ読みさせていただきました!とっても面白いです!これからもがんばってください (2017年2月24日 22時) (レス) id: 70dae8966d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒蘭夢 | 作成日時:2017年2月23日 3時

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