山姥切長義の"もしも" (ページ9)

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夢ページ9

愛姫side
夢を見ていた。
懐かしい夢。
あれはまだ、伊達のお屋敷にいた頃____。

『愛姫、愛姫。知ってる？』

『北条の屋敷には貴女と同じ刀の付喪神がいるんだって』

愛姫「そんなの、どこのお屋敷にもいるでしょ？」

『違うよ、違うよ』

『貴女の兄弟なんだって』

燭台切「へぇ。兄弟。いいじゃない」
愛姫「光忠さん！」
燭台切「僕にも兄様たちがいたよ。いいよ、兄弟っていうのは」
愛姫「そうなんですね」

『山姥を斬った、そいつは山姥を斬った』

『我らの仲間を斬った』

『恐ろしや、あな恐ろしや』

『愛姫、愛姫も我らを斬る？』

『兄弟みたく、我らを斬る？』

『山姥、可哀想』

『その刀は妖斬りの刀』

『憎い、憎い。我らの仲間を斬った』

『きっと醜かろう、そんな刀。愛姫と比べ物にならないくらい醜かろう』

『きっと切れ味も悪い。見栄えも悪い』

そんなはずない。
父様の打った刀はとても綺麗で、美しい。
醜いはずがない。
父様を、兄を悪く言わないで！
兄を悪く言わないで？
何で、会ったことのない兄のことでここまで腹が立っているんだろう。
おかしいかな？
愛姫「光忠さん。会ったことのない兄弟を悪く言われて怒るのは、悪いことですか？」
燭台切「いいや。むしろ良いことだよ。知らない誰かのために怒れる、悲しめるっていうのは限られた者にしかわからない。抱けない感情だ。人間はそれを、優しさという」
優しさ・・・。
私が優しさを知っているのはきっと愛姫様のお陰だね。
あの方はとても優しい。
やはり私は、あの方の刀で良かった。

それから数百年後____。
長義「初めまして、愛姫。俺は山姥切長義。きみと同じ、長義によって打たれた刀だ」
初めて兄に会った。
ほらね。やっぱり、父様の打った刀はとても綺麗で、美しい。

小竜「あ、起きた？」
愛姫「小竜さん」
大般若「疲れてたんだろ。まだ寝てて良いんだぞ」
愛姫「いえ、大丈夫です」
謙信「むりしちゃダメだぞ」
愛姫「大丈夫ですって」
鯰尾「やっと笑ったね」
愛姫「え？」
鯰尾「愛姫、ずっと暗い顔だったから」
国広「よし、愛姫が元気になったところで、軍議を始めるぞ」