山姥切長義の"もしも" (ページ29)

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離さないページ29

愛姫side
？？「やはり失敗か」
後ろから、声が聞こえた。
愛姫「あんたは？」
？？「僕かい？まぁ、きみたちがわかるように言うなら、時間遡行軍に与する人間。といったところかな」
僕、と言っているが、中性的な見た目、声のせいで男か女かわからない。
愛姫「その言い方、なんか鼻につく」
？？「まぁ今は外部から干渉しているような状態でね。だから、きみたちの攻撃は当たらないよ」
愛姫「ふぅん。じゃ、何をしても無駄ってわけだ」
？？「きみな物分かりがいいね。僕がしたいのは本丸の内部破壊。そこで目をつけたのが山姥切長義だ。彼は謀反を起こしてもおかしくないような刀だろう？だから、彼に万街でちょっとした罠を着けただけだよ」
一気に距離を詰め、喉元をかき斬る。
でも、斬った感触がない。
？？「僕に攻撃は当たらないよ。さっきも言ったはずだけど」
愛姫「無性に腹が立ってさ。ほんと、こんな馬鹿に利用されたお兄ちゃんがかわいそうだよ」
？？「この僕を、馬鹿と言ったのかい？」
愛姫「そうだよ。お兄ちゃんがそんなことすることないって、ちょっと考えたらわかるでしょ。馬鹿だなぁ～。それに、詰めが甘いから罠の事に気づかれるんだよ。改良したら？」
？？「それはそれは。ご指摘いただきありがとうございます。・・・とでも言えば満足かい？」
愛姫「自主してくれたらもっと満足」
？？「それは出来ない」
愛姫「じゃ、本丸から手を引いて。実験失敗でしょ？」
？？「うーん。そうだね。別の本丸、別の個体で試すとするよ」
愛姫「その前に注意換気しとくよ」
？？「また、会うことになるかもね。愛姫」
愛姫「だね。その時は、あんたを殺す」
奴の姿が消える。
くるりと振り返り、
愛姫「帰ろう、お兄ちゃん」
手を握る。
離すもんかと思った。
手が振り払われようと、何度でも握る。
一緒に帰ると言うまで、絶対に。
帰ってからも、離さない。
ずっと側にいる。
不安になんてさせない。
ポタッと、何かが手に落ちた。
暖かい水。涙。
私の手を握り返すお兄ちゃん。
長義「あぁ。帰ろう」
そう言って、私を抱きしめる。
気がすむまで、そうしていていいよ。
私は、その手を振り払ったりしないから。