お願い ページ20
愛姫side
寝ようと言ったのは良いものの、中々寝れない。
そっと起きて、洞窟の外を見る。
綺麗な満月だ。
それは、私の心の中まで照らしてくれているような、前向きになれる灯りだった。
それでも、やはり気持ちが沈み、溜め息をついてしまう。
伽羅「長義が心配か？」
愛姫「伽羅。ごめん、起こした？」
伽羅「いや、別に」
愛姫「何処かおかしいと思うんだよ。まだそんなこと言うのかって呆れるだろうけど。あのお兄ちゃんがこんな愚かな事するの、おかしいよ。いくら自分に不利でも、辛くても、何が一番自分の身を守るのか、よくわかってるはずなのに」
伽羅は黙って聞いてくれてる。
愛姫「悔しい。お兄ちゃんの悩みに気づいてあげられなかったのが。何も言ってあげられなかったのが」
伽羅「ハァ・・・」
愛姫「やっぱり、呆れるよね」
伽羅「全く、お前はなんでいつもそうなんだ」
愛姫「そうって、何が？」
伽羅「優しすぎるんだ、お前は」
愛姫「そりゃどうも」
伽羅「お前は怒るのが下手くそすぎだ。昼間の怒りは何処に行った」
愛姫「軍議で何処かに吹き飛んだね」
伽羅「全く・・・」
私の頬をつねる伽羅。
愛姫「いひゃい！」
やられっぱなしは腹が立つのでつねり返す。
伽羅「離せ」
愛姫「そっちが離せ」
二振り同時に手を離す。
それが何だかおかしくて笑ってしまう。
愛姫「ふっ、ふふふ。ははははっ」
伽羅「いきなりなんだ」
愛姫「いや、別に。こうしてると、昔に戻ったみたいだって思って。・・・ねぇ伽羅」
伽羅「何だ」
愛姫「もし、私がお兄ちゃんに与しちゃったら、その時は、お願いね」
『私を斬って』
そう言いたかったけど、言葉にできなかった。
でも、その一言だけでも伽羅には伝わったようだ。
伽羅「俺だって、誰彼構わず斬りたいわけじゃないんだが」
愛姫「伽羅だから言ってるの。こんなの、長船の皆さんには言えないよ・・・」
伽羅「ハァ。その時は容赦しないからな」
愛姫「うん」
私は良い戦友を持った。
心からそう思った。
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作者名：兼さんの耳飾り | 作者ホームページ：http://yuzunoki
作成日時：2023年4月4日 20時
