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56 無力 ページ7

「ここで途切れてる…」


渋谷上空。

無下限呪術で空に浮き、六眼も駆使して傑の呪力の残穢を追いかけた。

けれど、東京を出る直前で残穢が跡形もなく消え、Aの呪力もそこで不自然に感じられなくなった。


残穢が途切れたら、それ以上は追えない。

Aの行方も分からないまま。


「傑……何なんだよ、オマエ…」


Aまで巻き込むんじゃねぇ!

どう考えてもアイツは、呪詛師になんて向かねぇだろ。

何で今更連れて行くんだよ…!!


「…Aを、返せよ…ッ」


上空の冷たい強風に晒されながら、山の向こうの空まで意識と視線を飛ばした。


最強の力を手にしても、お前は無力だ。

一番大切な女すら奪われて救えない。

結局、誰も助けられない。


傑に、そう言われたみたいだ。















「五条! どうだった!?」


寮に戻って開口一番そう言って、硝子が駆け寄ってきた。


「ごめん…無理だった…」

「…そうか…」


分かり易く落ち込んで俯いて、どう見ても憔悴しきっている硝子に、これ以上の報告は出来なかった。


「…硝子。ちゃんと食えよ。昨日から何も口にしてねぇだろお前」

「…二年前…五条も、こんな気持ちだったんだな…」

「…俺だけで良かったんだけどな…」


誰にも…あの日の俺と同じ想いを味わわせたくなくて、俺は自分の能力を底上げしたはずだったのに…


「護れなくて…ゴメン…」

「…五条のせいじゃないよ。Aも…夏油も…」


分かってる。けど…

どうしても納得できねぇ。

傑の時も、今回のAも。

俺が常に傍に居れば、絶対に行かせなかったのに…

引き止められたのに…

そう考えてしまうから。

何で傍に居なかったのか…って、後悔ばかりが積もっていく。

それに…


「Aを行かせない方法は、ひとつだけだ…」

「五条…」

「Aを繋ぎ止めておく、その“力”が…俺には無かった…」


Aは、傍にいる俺よりも傑を選んだ。

それだけの事なんだ、これは。

ただし、傑が『呪詛師』である事実が、事態を重くしている。


「悟。上から呼び出しだ。行けるか?」


何だか一回り小さくなった気がする夜蛾先生が、最悪の台詞とともに談話室に現れた。

Aの失踪について、呪術総監部に説明に行ってたんだっけ。

傑の離反に引き続き、Aが失踪。

教え子の愚行を酷く責められたんだろう…声に力がない。

硝子と同じ程度には憔悴しているらしい。

まぁ…二人から見れば、俺も同じか…


「…ははっ…早速かよ…容赦ねぇ…」

「五条、まさか…」

「ま、避けられねぇよな…」


十中八九。

Aが呪詛師認定された時の、死刑執行人の任命だ。


*

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設定タグ:夏油傑 , 五条悟 , 呪術廻戦   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2022年12月24日 9時

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