命短シ、羽バタケ乙女 (ページ12)

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第10話ページ12

『あれ……』

周りを見るもどこにもいない。
父は先程巣穴に戻って行くのを見たと言っていた。
お礼を言いたかったのに、としょんぼりするAにまた明日来てその時言おうと、今日は遅いからとホテルに戻らせる。

ホテルの道中、あの巣穴で起きた事を興奮して話すAに父親は嬉しく思いつつ、娘の無事に安堵していた。そして、あのアーマーガアの特異性を感じていた。

聞けば、巣穴に落ちた人間を助けるポケモンは聞いた事がないと。
巣穴に落ちる人間は珍しくは無いが、大抵はポケモンに見つからないよう隠れ、それをスタッフトレーナーが救助するというのが殆どで、運悪く見つかってしまったトレーナーは……。

ワイルドエリアのポケモン達は人馴れしていない完全に野生のポケモンだ。しかも巣穴にいるダイマックス個体は特に気性が荒いものが多く、トレーナーですらないAがアーマーガアに触り、背に乗せてもらった等という話は当然信じられないものだった。

『父さん、またあしたもつれていってくれる？』

｢勿論。父さんもそのアーマーガアにお礼言わなきゃいけないしね｣

出来ることならそのままゲットできないかな、と考えていた。
娘が会ったあのアーマーガアはキョダイマックス個体でしかもあの様子だと５Ｖはある。是非とも捕まえたい、と廃人心が疼いた。

────

翌日、朝一番に2人は昨日のアーマーガアの巣穴に訪れた。
Aの腕にはきのみが沢山入った袋が抱えられている。

『アーマーガア』

……

巣穴の外から呼び掛けるも返答は無い。
相変わらず巣穴のエネルギーは物凄いので中にいるのは確かだと思うが……

｢……流石に来ないか｣
『……』
｢ｯちょっとA！？！？｣

意を決してAは再び巣穴に飛び込んだ。父のAを掴もうとした手は虚しく空を切る。

再び落下した先はアーマーガアの背中で、最初の時と同じようにアーマーガアがブルブル震え、Aを地面に落とす。

Aを見つめ、なんの用だと、また落ちたのかと聞くかのように大きく鳴いたアーマーガアに、Aは笑顔で

『きのうのおれい！！』

とアーマーガアの声に負けず大きく叫び返し、袋の中のきのみを見せた。

──────

A…
アグレッシブさは兄譲りです
初めてポケモンに乗って空を飛んだ感覚が忘れられない

父…
兄妹そろって行動力の塊すぎて頭抱えてる
この後ちゃんとAを叱ります
双子に何て説明したら……

アーマーガア…
ニンゲンのこどもふしぎ