白子ポン酢 ページ9
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Aはお酒がとてつもなく弱い。
付き合って一年、その間にも歓迎会やら送別会、忘年会や新年会。あらゆる酒の場があって、それなりに飲まされて夢と現実の世界の狭間を行き来した状態で帰ってくる彼女をみてきた。
もちろん、彼女の職場には男もいる訳で。
俺以外の男の前で無防備な姿を見せないでほしい。俺の前でしか飲まないでほしい、なんて縛り付けておくようなことは言えない。
彼女には彼女の付き合いがある。
なんでこんなことを考えてるかって?
小一時間前、彼女から今週末に飲み会が開かれることを知らされた。
お酒が弱い癖に押しにも弱いせいで、断れずに飲まされる。
今まで、なんだかんだ飲み会が終わる頃に迎えに行くことが出来ていた。
スケジュールと睨めっこ。何度見ても変わらない。今週末は深夜まで収録の予定があった。
『はあ、』
「たかくん、どうしたの?」
俺の気なんて知る由もないAは俺を心配する。
お前のことで悩んでんだよ、なんて言えない。
『別に。風呂入ってくるわ。』
嫉妬心剥き出しのダサい俺。彼女に嫉妬深い男なんて思われたくないからバレないようにその場を離れた。
やきもきした気持ちのまま、彼女の参加する飲み会の日を迎えてしまった。
収録は順調にすすみ、クタクタになった俺はゆっくり帰り支度をする。どうせ焦って帰ったってAは既に出来上がった状態で眠りについてる頃だ。
日付けが変わろうとする頃、珍しく彼女からと知らせる着信音が鳴り響く。
『どうした?まだ寝てねーの?』
「あのね、まだ外で。その、たかくん、迎えに来てくれたりしないかな、なんて。」
まだ外?まずそこに引っかかった訳だけど、そこはぐっと堪える。
あれ?待てよ。A酔ってない?
「やっぱ無理だよね。ごめんね、変なこと言って。じゃあ、お仕事頑張ってね。」
そそくさと電話を切ろうとする彼女を制する。
『今仕事終わったから。どこに居んの?』
俺の居るスタジオからそう遠くない位置にいる彼女の元へ俺は急いで向かった。
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作者名:すず。 | 作成日時:2019年4月28日 1時