REAL ME

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想いが強過ぎる故の幻覚なのか
はたまた起きているのに夢でも見ているのだろうか
そんな奇想天外な事が起きる筈なくて
今俺が見ている姿は幻ではない現実だ



「…きたやま…………」

「な、んで…ここに…」



屈んでハットを手に取った藤ヶ谷が俺の名前を呼ぶ
現実である事を理解したが藤ヶ谷がここにいる意味が理解できず頭は混乱していた
俺の顔を見て少し微笑んだ藤ヶ谷



「夜景、綺麗だね…」



手にしたハットを俺の頭に乗せて隣に来た藤ヶ谷はポールに手を付いて目の前の夜景を眺めながら言った



「…………」



お互いに意識してはいるものの特に言葉は発さずに暫く並んで海を眺めた

水面にライトが反射してまるで宝石を散りばめたようにキラキラと輝いている



「あの……」
「ふじがっ…」



言葉を発したタイミングが被ってしまって
またお互いに無言になる
この状況に耐えられなくて俺が話を続けた



「帰ったんじゃねぇんだな、藤ヶ谷は明日ゆっくり？」

「う、うん…午後から撮影…北山は？」

「俺？俺も午後からロケ」

「そっか…」



明日が早いわけじゃないなら寄り道も有りだけど
だからって俺のとこに藤ヶ谷が来るこの状況は理解に苦しむ
俺、何か忘れ物でもしたか？
でも藤ヶ谷が来る事じゃねぇよな
仕事で重要な事でもあったか？
ライブという大きな仕事は終わったんだし
電話でもメールでも連絡は出来る筈

考えてもさっぱり分からない



「ふふふっ…」



藤ヶ谷が笑った



「な、なに笑ってんだよ！」

「いや、なんか一人で百面相してるから…」

「そ、そりゃ、百面相もするわ！お前が何考えてんだか…さっぱり…分かんねぇ………」

「ふはっ」

「だから笑うなって…」



口元に手をあてながら笑う藤ヶ谷
何がそんなにおかしいんだよ


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