REAL ME

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またすぐに沈黙が二人を包む
眉間に皺を寄せて何かを考えている様な藤ヶ谷を横目にすっかり短くなったタバコを灰皿へ押し付け火を消した



「…そろそろ戻るか」

「ちょうどいい距離感って何」



藤ヶ谷の声が低く冷たくなった
機嫌が悪いのが分かる



「前にお前も言ってたろ？俺とお前は馴れ合ったりするんじゃねぇって…たまに絡んだりするくらいがちょうどいいんだよ」



このままここにいるのも息が詰まる
前を通り過ぎようとするとギッとこちらを睨みつける藤ヶ谷と目が合った



「じゃぁ、玉とは馴れ合ったりするんだ？」

「は？」



なんでここで玉森が出てくんだよ
不機嫌になるのもマジで意味分かんねぇって



「玉にかわいいなんて言われてデレデレして…さっきだってふざけてて時間過ぎてただろ、二人とも責任感なさ過ぎ」

「それは俺が悪かった。玉は俺に気ぃ遣ってくれてただけだから……」

「仕事に余計な感情持ち込んでんなよ」

「お前に関係ねぇだろ」



藤ヶ谷の機嫌を損ねた理由が分からない
でも最後の俺の一言で藤ヶ谷の険しい顔が一瞬悲しそうに歪んだのは分かった

どうしてそんな悲しそうな顔をするの？
どうして不安げに瞳を揺らすの？



「……よな…」



藤ヶ谷の言葉が聞き取れなかった



「引き止めて悪かった…」



そのまま藤ヶ谷は喫煙所を出て行った
俺はただガラス越しに藤ヶ谷の後ろ姿を見つめる事しか出来なかった


スタジオに戻って暫くするとライブのリハーサルは始まって
藤ヶ谷とはいつも通り目も合わせず
言葉も必要最低限しか交わさない

それでもリハーサルは順調に進んで
ライブの形がどんどんと出来ていく

藤ヶ谷と俺が関わらなくても何も困らない

虚しく感じるけれど何故だかホッとしてる自分もいて
俺は藤ヶ谷の気持ちも自分の気持ちさえも分からなくなっていた


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