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うつる景色に添える紅・対案 ページ5

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幾度あったか分からない、戦による離別。
壁は崩せど築かれて、いつしか檻へと形成す。
遠くとは、なんだろう。『またいつか』とは、なんだろう。

影浦の言葉を信じても、怖がりの傷は其処にある。

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「なるほど。じゃあ明日、オペが転属しちまうんだな」

あらましを聞いた荒船は、得心したように顎に手を当てた。

彼女のみが、伝達ミスによりオペレーターの転属を知らなかったという衝撃。
2週間足らずしか別れを惜しめなかった歯痒さ。
そして、明日に控えた送別会。

いよいよ翌日に迫り、感情の整理が難しくなったのも当然の帰結だろう。

自販機の傍に備え付けられたソファに座る背は、ずっと小さい。面持ちは普段より儚く見え、今にも瓦解しそうだ。表情の変化は乏しいほうだと思っていた分、不謹慎ながら荒船にとっては新鮮に映る。

「(ひょっとして、無理して笑ってたのか)」

そんなことを、ふと思う。
予定より早く辿り着いた荒船が消え入りそうな顔を目撃していなければ、彼女は翌日まで誤魔化しの笑みを湛え続けていただろう。

「いつか会えるって。それは会えないのと同じだよ」

実感の籠る言葉。寂寥。どこか諦念と怯えを湛えた瞳。
戦に持ち込めば命取りになる感情を、今はぽろぽろと取りこぼす。

「お別れは、きらい」

Aはより強く眉根を寄せて、口を結び、涙腺をかろうじて堰き止めている。



「…話は大体分かった」

荒船は暫し逡巡した後、徐に立ち上がった。

「集中できないだろうし、その様子じゃ予定してた映画はムリだろうな」
「…!」

ばっ、と彼女が顔を上げ、焦ったように捲し立て始めた。

「う、ううん。行くよ、約束だから。ごめん、私は大丈夫、」
「映画には行く」

安心させるかのように、怯えた羅列を遮る。そうして不敵な笑みを浮かべ、帽子の鍔に手を添えた。



「『予定してた』やつ以外の映画…つまり、プランBだ」

さあ、この手を取って。『希望』の一品を見繕ってみせるさ。

弾けた音の導きに・香気→←うつる景色に添える紅・発覚



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作者名:未紺碧 | 作成日時:2022年5月20日 12時

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