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路頭の壁際に立つ・波風 ページ7

――――――――

そこに立つ者は皆、人だ。

――――――――



生憎、
その日は朝から雨天と曇天を繰り返していた。



B級ランク戦当日。
順調に階段を駆け上がる風間隊は、此度も勝利の光を掴もうと画策している。



「ありゃ」



隊室の扉が開く。

宇佐美の座るデスク越しに現れた少年は、その赤髪からすっかり水を滴らせていた。



栞「派手に降られたねー大丈夫?」
「ありがとうございます。大丈夫ですよ」

肩に掛けた青いタオルで水気を取る歌川は、いつもの笑みで軽く会釈をする。



栞「ムリはしないでね。
…そうだ、きくっちーのこと何か聞いてない?」
歌「菊地原は少し遅れてきます」
栞「オッケー。
じゃ、本日の5番手さんをのんびり待ちますか〜!」
歌「…え?」

そう言ってのびをする宇佐美の言葉通りなら。



歌川が慌ててチラッと部屋の隔て向こうを覗けば、
やはりそこには2人の隊員がソファに掛けていた。



歌「…お疲れさまです。すみません、気付かなくて」

冷や汗をかく歌川に、片側…風間が端末から顔を上げる。

風「…風邪引くぞ。シャワーを浴びた方がいいんじゃないのか?」
歌「えっ!
い、いえ、菊地原と入れ違いになったら申し訳ないですし」

風「寒さによる風邪に掛かった試しがないのなら、着替えるだけでもいいが」
歌「…すみません、シャワー行ってきます」
風「そうか」


いってらー、という宇佐美の声を背に、彼は早足で隊室を後にした。





さて、もう片側のAは、そのやり取りを相変わらずぼんやりと眺めていたようだ。

風「城岩」
A「……、あ、はい」

そのためか、返事に一拍の間が開く。
その様子にも風間は顔色を変えず、淡々と事実だけを確認していく。

風「記録(ログ)の確認はもういいのか?」
A「あとは実戦あるのみ、です」
風「そうか。頼もしいな」
A「仕事なんで」



いつものように、緊張とリラックス、そして士気が混ざりあう。

歌川が戻り菊地原も合流すれば、いつものように作戦会議が始まる。



今日も、負ける気などなかった。



――――――――



いつものように命じられた、スコープの先。



ドガッ!



見慣れた筈の傷口が、
今日は見慣れぬ者の腹部に現れる。



「《風間さん!》」
A「…!」



風間隊内に僅かな動揺が走り、
イーグレットを構えたAの手にも、じわりと緊張が滲む。

B級ランク戦・夜の部。
順調に駆け上がる風間隊を阻むように、暗雲は立ち込めた。

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(プロフ) - この小説大好きです。頑張ってください! (2020年3月9日 22時) (レス) id: 3553c63234 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 続き気になります!更新頑張って下さい。 (2017年8月1日 10時) (レス) id: 05ce5fca4a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:未紺碧 | 作成日時:2016年6月27日 18時

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