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歪み硝子に決別を・明星 ページ47

再び呼吸音の拾える隊室になる。

ひどく、喉が渇く。
Aは内心、後悔していた。

彼女には人の機微は判らない。
傷つけただろうか。引いただろうか。離れてしまわないか。

彼が何を思ったのかなど知る由もない。
精々、廊下を過る気配たちが、入室しないか見張り続ける程度で。




「…あの、あのね。ごめんなさ」

「俺はまだ何も言ってねぇ」

自責に耐えかねた謝罪は、届く前に叩き落とされた。

「あー…」

どこか思案顔で、がしがしと頭を掻いている。



一方のAは、こてと首を傾げてしまう。
責め立てるにしては、空気が柔らかいと思ったのだ。

「ンな重ぇモン、一人で抱えてどーすんだよ。ただでさえチビなんだからそのうち潰れちまうぜ」
「ちび…?」

影浦は、どこか楽しげな様子でソファに座り直した。


「そもそも俺がどう思うかなんざ、言ってみなきゃわかんねーだろが。」


口調こそ呆れ気味だが、表情は穏やかに見える。


「お、怒ってないの?」
「あ?怒る要素あったか?」
「だって、他人とカゲを重ねて」
「さっき自分で『別人』だって言ってたろ。ちゃんと分かってんなら、いい。
 似てんなら仕方ねー、くらいで勘弁してやる」

「…!」



そして影浦は、ずい、と身を乗り出した。

「どっちかってーと隠されてたほうがムカつくわ。
いーからもっと俺を頼れ、遠慮しやがんな!」

本音と建前、燻る炎をない交ぜにして、彼女を叱った。






…これこそが、決別の一撃。

これこそが、

『今の』関係に亀裂を入れる一助となったことを、彼は知る由もない。

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(プロフ) - この小説大好きです。頑張ってください! (2020年3月9日 22時) (レス) id: 3553c63234 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 続き気になります!更新頑張って下さい。 (2017年8月1日 10時) (レス) id: 05ce5fca4a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:未紺碧 | 作成日時:2016年6月27日 18時

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