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離れゆく背と・鬼才 ページ37

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ズドン。

天賦の才の使い道は、人それぞれ。

ズドン。

鍛練模様も、人それぞれ。

ズドン。

今日も彼らは、点を省みない。


――――――――



「こんなもんかね」

通常狙撃訓練が終わった訓練場で、そんな声を拾う。
毎週欠かさず足繁く通うそこは、今日も今日とて銃声が響いている。

Aによく聞こえたその声は、すぐ隣に居合わせた訓練生からのものらしい。

少し気になって、当真と呼ばれたリーゼント訓練生の先の的を見遣った。
A「……わあ」



ねこ。




「お?アンタ確か…」
きょとん、と目を瞬かせていると、当の本人が声を掛けてくる。
隣り合わせなので、まあ必然的に気付かれるわけだ。

A「私?城岩A。」
「やっぱりな。オレは当真、ヨロシクシロさん」
A「やっぱり?」

彼の言葉も気に掛かるが、やはり当真の的をちらりと見遣ってしまう。



A「うん。ねこ…だよね」
猫がいるのだ。

正確には、訓練で放つ弾痕によって、愛らしい耳のついた猫が点描されていた。
戦場では決して拝めぬであろう『お遊び』に、Aは二度瞠目した。

当「かわいーだろ?」
?「相手にしないほうがいいです」

フランクに話しかける当真の声。その後ろから、また別の男声。
首を傾げ見れば、丸く髪を整えた容姿端麗な少年と視線が合う。綺麗な瞳だ。

当「冷てーこと言うなよ奈良坂」
?「もう少し真面目にやったらどうだ当真さん。訓練の意味がないだろう」
きろり。
奈良坂と呼ばれる少年が、事態を掴めないAから視線を戻した。

当「うーるせーなぁ。オマエはカーチャンかっての。当たって当然な的なんて興味ねぇよ、オレは」
奈「上位の人がそんなんじゃ、示しがつかないと思わないのか」
当「『そんなん』な上位に勝てない奴から言われてもなぁ〜」
奈「なんだと・・・!」

売り文句に買い文句、険悪な空気が訓練場の一角を満たしていく。
既に散りつつあった狙撃手は、生憎これらを諌める手立てを持ち合わせていない。



A「・・・(こういうのはスルーしたほうがいいけど、)困ったなあ」
ぽろり、と本音を漏らす。
それを皮切りに、奈良坂がふいっと訓練場を去っていく。
苛立ちと悔恨、それが彼の残り香。


当「型に嵌るなんざ、まっぴらゴメンだぜ。お前もそう思うだろ、ユズル」
当真は、また別の小さな少年の頭を撫でながら言う。


・・・奇しくもこの日が、後に狙撃手と交流を深めるきっかけになるのだった。

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(プロフ) - この小説大好きです。頑張ってください! (2020年3月9日 22時) (レス) id: 3553c63234 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 続き気になります!更新頑張って下さい。 (2017年8月1日 10時) (レス) id: 05ce5fca4a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:未紺碧 | 作成日時:2016年6月27日 18時

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