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束の間の戯れ・相席 ページ4

翌日、
空が曇り始めた昼時2時、空腹を満たすためAは食堂へ向かっていた。



給金が支給されるまでは、所謂保護対象として最低限の衣食住が提供されていた。

だが漸くB級の出来高制のそれが支給されたため、
借りを作らず自分の懐から飯にありつきに来た次第である。



A「…(まあ、食べられれば何でもいいか)」

券売機の順番待ちの間、ぼんやりとメニューを眺める。

飯にありつけること自体が、ありがたいことなのだ。



チャリン。

前の人物がお釣りと食券を取り出したところで、ふとAは我に返る。



「お疲れ」

この声は。





A「東さん」
東「お前も遅飯か?」

こちらに振り返った東を認識すると、
前に居たことにまるで気付かなかったことをAは後悔した。



A「えっと、おそめしです。
居住区に小銭取りに帰ってて」
東「そうか。…ん?」
東は一瞬怪訝な表情をする。

A「遠回りしました」

言葉を濁すと、彼は何かを察したように頷いた。

東「うん、焦らなくていいけど…頑張ろうな」
A「精進します…」



しゅん、と項垂れつつ、
券売機に鈍く光る硬貨を投入して適当なボタンを押した。









流れで東と相席することになり、トレーを慎重に持ちながら席へと向かう。

白いうどんから立つ湯気と、食欲をそそる香りの汁が足を急がせる。
しかし何故コロッケが添えられているのだろうか。



ふと、気配が重なっていることに気付く。
先に座していた東の横に、見慣れぬ顔が見えた。



「おっ、来たな」
髪色はまるで深い森の夜。

顎髭と飄々とした笑みを携えるその青年は、
だらしない見た目と相反し、衣服の肩部にエンブレムが刻まれている。
とすれば、A級隊員だろうか。



Aはことん、とトレーを机に置き、東の正面に座った。

東「さっきのやりとりを見てたらしくてな。
お前と話してみたいそうだ」

東はそう言いながら手を合わせ、牛丼を箸でつつく。

今度は牛丼にしようか。



「ま、そういうことだ」
青年は出汁の滴る餅を頬張りながら言う。

「俺は太刀川。ヨロシク」
A「城岩Aです。どうぞよろしく」

軽く会釈をし、自分のトレーに乗るうどんの鉢に手を添える。

しかしまだ視線を感じ、
チラリと斜め前を見ればやはり太刀川と目が合った。



太「取り敢えず…」

真剣な眼差しでじっとAのトレーを見つめ、やがて太刀川は口を開いた。



太「そのコロッケ、貰っていいか?」

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(プロフ) - この小説大好きです。頑張ってください! (2020年3月9日 22時) (レス) id: 3553c63234 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 続き気になります!更新頑張って下さい。 (2017年8月1日 10時) (レス) id: 05ce5fca4a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:未紺碧 | 作成日時:2016年6月27日 18時

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