伊勢屋篇 第十九幕(44話)[夢主様side] ページ5
「…おじさん達、誰…?」
三人の少女のうち、一人が怯えた声で言う。
見たところ長女のようだ。
近藤さんが「おじさんって誰?」とか戸惑うように言うのに、「テメーの事に決まってるだろうが」と
土方さんがツッコむという不毛なやりとりを見届けてから、今度は私が彼女達に声を掛けた。
「私達はね、貴方達のお父さんにお願いされて、
貴方達を助けに来たの。もうこんな所嫌でしょう。
ほら、今助けてあげるからね」
私が縄を解こうとすると、「待って」とか細い声が耳に飛び込んでくる。
その声に、近藤さん達も目を少し見開いた。
「別にさ、ここが嫌なわけじゃないんだ。
確かにご飯はまともに貰えないし、普段は身動き
取れないようにされちゃってる。
_でも、どうせ家にいてもここに居ても同じだから」
悲しそうに呟くのは長女だった。
「そりゃどういう事でィ。ちょっとお兄さん達に
話してくれやせんかィ?」
沖田さんが腕を組み壁に体重を預けながら言った。
それに答えたのは次女だった。
「あたしたちね、お母さんがいないんだ。
だから、今まであたしたちを育ててくれたのは
お父さんだけなんだ。
だけど、お父さんはまるであたしたちを物のように扱うんだよ。お客さんが来たらお茶を運ばせたりとか、色々と…」
「つまりは、テメーらの父ちゃんみてえにこき使われる事のない此処の方がまだマシって事かィ?」
沖田さんの言葉に、三姉妹は揃って頷く。
何なんだよ、一体。部下どころか娘までこき使ってるというのか?悪代官かよ。
それに続け今度は末っ子の三女が声をあげる。
「それにね、白い服のお姉ちゃんが遊んでくれるんだ。私たちがやったことの無い遊びだよ。
…あ!お姉ちゃんだ!」
私たちがここに上がってくるときに使った梯子の方を指差して言う末っ子。
私たちが揃ってその方向を向くと、そこには肩くらいまでの髪をおさげにした、白いワンピースの女の子が梯子を登りきった所だった。
その子は薄暗い中でも分かるくらい真っ白な肌を
していて…いや、青に近いだろう。
不健康な感じといえば分かるだろうか。
「お峰お姉ちゃんだ!」
「え…?」
私達四人は同時に小さく声を漏らした。
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蒼桜 - アトさん» コメント有難うございます!藤咲さん、悪女っぷりを発揮し始めてます(笑)面白いと言って頂けて幸いです!次巻が公開されたら、是非訪問してくださいね♪ (2018年12月30日 10時) (レス) id: 09d654d65e (このIDを非表示/違反報告)
アト(プロフ) - 藤崎バルス。すごく面白いです!(*^ω^*) (2018年12月29日 20時) (レス) id: e67fafc940 (このIDを非表示/違反報告)
蒼桜 - 乃愛さん» コメント有難うございます!面白いと言って頂けて嬉しいです!これからの展開、是非期待してくださいませ!(笑)これからも頑張ります! (2018年12月26日 20時) (レス) id: 6b4203fd69 (このIDを非表示/違反報告)
乃愛 - 初コメです!この小説とっても面白いです!毎回楽しく読んでいます!ライバルの女の子が出てくるとことか凄く楽しみです!更新頑張ってください(〃⌒ー⌒〃) (2018年12月26日 18時) (レス) id: 986dd761b2 (このIDを非表示/違反報告)
蒼桜 - RURUさん» 本当ですか!とても嬉しいです!有難う御座います!名前変換と言いますと、現在の伊勢屋篇の姉妹達の名前とかだったりしますかね?一応出来るようにしておきますが、間違っていたらすみません! (2018年11月11日 10時) (レス) id: 09d654d65e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千暖 | 作成日時:2018年11月5日 16時